2017年11月19日(日)

患者本位の効率医療に役立つ診療報酬に

社説
2017/11/3付
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 日本の医療はコストの低さの割に大きな効果をあげているという声を医療従事者から聞く。それは一面で事実だが、医療技術の飛躍的進歩や日本人の急速な高齢化・長命化を考えると、もう一歩踏み込みこんで効率的な医療体制を整える時期にきている。

 年末に決める2018年度予算案の焦点は、保険医療サービスの公定価格「診療報酬」の改革だ。個人と企業が払う保険料・税を過重にしないため、患者第一を貫きつつも減額改定を前提に医療費の無駄を省く仕組みを確立するよう、安倍政権に強く求めたい。

 診療報酬は主に、医療職の人件費にまわす本体と医薬品などの薬価に分かれる。厚生労働、財務両省は薬価を市場実勢に即して下げる方針を決めた。問題は本体だ。そのあり方は医療職の待遇に直結するだけに、日本医師会などが引き下げに反発するとみられる。

 しかしこの十数年、産業界の賃金や物価水準は大きく上がっていない。医療職の特別扱いは保険料・税の負担者や患者の納得を得られまい。本体をある程度引き下げながら医療の質を高めるよう、厚労省は診療報酬の中身を工夫すべきだ。二点、提案したい。

 第一は入院病棟の再構築だ。急性期病棟のうち、看護基準が最も手厚く入院基本料が最も高い入院病棟は、約35万床ある。だが、必ずしも重症患者が入院しているとは限らないのが実態だ。

 基本料を看護基準という外形で決めるより、実際の入院患者の重症度や提供している医療の中身に応じた設定にするのが理にかなっている。それは、真に急性期医療を必要とする患者と、増加する回復期の患者のためでもある。

 第二は調剤薬局の報酬引き下げだ。医薬分業が進展し薬局数は5万8千件(15年)とコンビニ店舗数を上回っている。薬剤師1人あたりの処方箋数は減少傾向にあるが、過去の調剤報酬上げが経営に規律を働きにくくさせている。

 高齢患者の増加で薬剤師の役割は一段と高まっている。漫然と薬を出すような薬局は実入りが減るようにし、飲み合わせなどについて親身に助言する体制を整えた薬局に加算する改革が必要だ。

 診療報酬は国の社会保障予算に直結するため関心が集まるが、その改定だけでは医療改革は完結しない。患者負担の引き上げや医療のあり方そのものの効率化に、政権あげて取り組むべきである。

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