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ネット広告に構造的問題 政治工作や詐欺の温床に

藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

昨年の米大統領選をめぐって噴出した「デマ(フェイク)ニュース」騒動。終止符が打たれるどころか、むしろその疑惑は深まっている。いま、米議会ではフェイスブックなどの大手交流サイト(SNS)が提供する広告が、ロシアによる大統領選への干渉を許したのではないかとの調査が進んでいる。デマニュース騒動がネット広告の分野に飛び火したのだ。

残念ながら、ネット広告には、このような指摘を受ける構造的な問題点があるのを否定できない。2017年に入ってからも、グーグル傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」に掲載されている人種差別やイスラム国の扇動といった過激な動画に、英国の公営事業や大手企業の広告が自動的に配信されている事態が指摘され、多数の大手広告主が広告を差し止めるという「事件」が起きた。

ここに来てさらに、フェイスブックやツイッター、グーグルは、大統領選期間を中心に、ロシア政府とつながりの大きい企業からの広告を掲載してきたことが改めて問題視されている。これは、必ずしも各社の広告掲載基準の逸脱を意味しないが、フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、ロシアからの干渉を許したと認め、対処を約束する事態となった。

同氏は、これに先だつ9月にも、フェイスブックが広告主に提供するターゲット型広告商品で、「嫌ユダヤ人」という設定もできるようになっていたことを指摘され、謝罪と対処を約束したばかりだった。

大手SNSをやり玉にあげるような書き方になったが、「構造的な問題点」と書いたのを思い返してほしい。ネットメディアの仕組みがもはや丹念な人の目と判断力では運用できないようなものへと変貌しているのだ。

たとえば、米国のある調査によれば、広告主の2割は、1回のキャンペーンに1000ものメディアに広告を掲載する。ネット広告では、露出効果が高そうなメディアを自動的に選択して広告を配信する仕組みが常識だ。この「自動配信」が、目も背けたくなるような記事や動画の横にブランド商品の広告を表示しながら、当の広告主さえそれに気づかずにいるという惨状につながる。

膨大な配信先へと広告を配信する仕組みには、そこに不透明な広告仲介事業者を招き入れる事態にもつながる。広告が「消費者」にクリックされたと報告される取引でも、実はロボットがクリックを装っていたといった「広告詐欺」とも言えそうな事態も増えている。

一連の事件を受けて、世界的な広告主企業であるプロクター・アンド・ギャンブルは、月間2000社にも上る米国内での広告配信先を、1000社以下までに絞り込んでいるという。

出口が見えないようなネット広告の現況だが、だからこそ信用のおけるメディアと広告の組み合わせに期待が集まる段階にきたともいえる。第三者視点で広告運用を監査する仕組みも台頭している。詐欺的な広告には、テクノロジーによる対応と、信頼を獲得するための人間的な取り組みが重要だ。デマニュースへの対処と同様に緊急度が高まっている。

[日経MJ2017年10月30日付]

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