2017年11月20日(月)

商工中金は完全民営化含め刷新せよ

社説
2017/10/27付
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 中小企業を取引先とする政府系金融機関の商工組合中央金庫で、組織ぐるみの不正融資の全容が判明した。国の制度融資である「危機対応融資」を通じて、本来は対象外であるはずの経営が悪化していない取引先企業の財務諸表を改ざんし、大規模な低利融資を実行していた。

 割り引いた利息の原資は税金である。業容を維持しようとする商工中金の組織防衛の意図は露骨だ。営業現場に過剰な貸し出しノルマを課した経営陣の刷新にとどまらず、組織の解体的な出直しが必要だ。金融市場が平時に移行しているのに維持されてきた、危機対応融資の見直しも欠かせない。

 商工中金は5月に業務改善命令を受け、不正の全容を再調査した。その結果、国内100店舗のうち97店舗で444人の職員が4609口座(融資額2646億円)について収益を悪くみせるなど不正に手を染めていた。全職員の2割が処分対象となる。信用が前提の金融機関として前代未聞だ。

 監督官庁である経産省・中小企業庁の責任も重い。引責辞任する安達健祐社長ら歴代首脳の多くが経産省の事務次官級OBだ。不正の大半は、中企庁に代わって金融庁が立ち入り検査の主導権を握ってはじめて判明した。天下り先に遠慮した監督・検査に緩みがあった、と疑われても仕方あるまい。

 政府系金融改革の一環で商工中金は組織見直しの対象となり、危機感を強めていた。このため低利を武器に民間金融機関に対抗し、強引に存在意義を高めようとしたことが不祥事の背景にある。政府は商工中金の業務内容をゼロベースで見直し、完全民営化を含め、経営体制を再検討すべきだ。

 政府が金利や貸し倒れを補填する危機対応融資は、中小企業の資金繰りが極度に悪化した2008年のリーマン危機下で創設し、東日本大震災で拡充した。民間が一斉に貸し渋りに転じる緊急事態に際して公的金融の機能は否定しない。だがリーマン危機のような本物の危機が去った後も、政府は「原材料高」「円高」など新たな名目を加えて予算を確保してきた。

 金融市場が正常化した現状で、危機対応融資は縮小・廃止すべきだ。公的金融の肥大化を監視し、安易なばらまき融資を回避しなければ、税金の無駄遣いになるだけでなく、企業の新陳代謝を通じた日本経済の足腰の強化にもつながらない。

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