春秋

2017/10/26 1:11
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日本の品質管理活動の父といわれる人物といえば米国のデミング博士だ。その名前のついた賞もある。1950年、日本で最初に開いた講習会には企業の幹部や技術者ら230人が集まった。そこで強調した一つが、顧客との間にある壁を取り払え、ということだった。

▼昔は洋服や靴を作る人も鍛冶屋も、自分の顧客を一人一人よく知っていた。しかし工業化が進んでこの結びつきは薄れ、製品が顧客にどう受け止められていて、どう改良すればいいかが見えなくなっている――。講義録には危機感がにじむ。市場調査などを通じて製品の使い手と企業との距離を縮めることが肝要と説いた。

▼使い手のことを考える姿勢が品質管理の基本というわけだ。神戸製鋼所のデータ改ざんも日産自動車の無資格検査も、それが欠けていたことが問題なのではないか。素材の納入先企業が安全な商品をつくり、消費者が安心して使えるようにと本気で思っていたなら不正は防げたかもしれない。顧客との間に壁ができていた。

▼神鋼では納期の順守で現場への過度な圧力があったという。日産は人員配置が不十分だったとの指摘がある。不正の原因究明を急ぎ対策につなげてほしいが、なかでも求められるのは製品の使い手になったつもりで品質管理の体制を見直すことだ。両社ともデミング賞の受賞歴がある。このままでは実績が風化するだけだ。

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