2018年7月22日(日)

「IS後」の火種を放置するな

2017/10/25 0:55
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 過激派組織「イスラム国」(IS)が首都としてきたシリア北部の都市ラッカを、米軍が支援するクルド人主体の民兵組織、シリア民主軍(SDF)が制圧した。

 ISは7月にイラク最大の拠点都市モスルも失った。偽りの国家はひとまず、崩壊したといえるだろう。だが、これで安心してはならない。国際社会はIS後にできた統治の空白を放置せず、地域の安定に取り組まねばならない。

 ISは2014年に国家の樹立を宣言した。理想のイスラム社会への回帰を訴えたが、実態は恐怖と暴力が支配する無法集団だった。こんな組織が長続きするはずはない。米国主導の有志国連合やロシアの掃討作戦によって急速に支配領域を失った。

 ISは多くの課題を残した。ラッカを失ったとはいえ、まだ残党がおり、指導者バグダディ容疑者の消息も不明だ。ISが掲げた過激思想は世界中に拡散し、テロの脅威はこれからも続く。

 なぜ世界中から多数の若者が過激思想に引き寄せられ、残虐行為に加担したのか。ISの再来を防ぐには、根の深い問題に粘り強く対処していかねばならない。

 心配なのはIS後に中東に残された火種だ。内戦を戦う様々な勢力や米国、ロシアなどの大国は、IS掃討を優先してきたが、共通の敵が消えたことで新たな勢力争いが始まっている。

 クルド人が主体のSDFがラッカを押さえた結果、シリアはクルド人の支配下に入る北部と、アサド政権が支配する地域に分断された。その固定化は一つの国家としての存続を難しくする。

 イラクでもモスル奪還を共に戦ったイラク政府軍とクルド人部隊がモスルの陥落後、クルドの独立をめぐり激しく対立している。

 ISの台頭を許したのは、シリア内戦に何の手も打てない国際社会の機能不全だ。これ以上シリアの混乱を放置してはならない。そのうえで、どう中東に安定をもたらし新たな秩序を築いていくのかを、考える必要がある。

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