2018年7月22日(日)

日本経済の持続力高める改革急げ

2017/10/23 23:41
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 衆院選で与党の獲得議席が3分の2に達した。野党候補の乱立が有利に働いた面もあるが、安倍内閣は国政選挙5連勝で政権基盤を固め直した。日本が取り組むべき優先課題は、財政や社会保障制度の立て直しと成長力強化の両立である。政府・与党はその実現に集中的に取り組んでほしい。

 近く発足する第4次安倍内閣は2020年の東京五輪・パラリンピックとその先を見据え、日本経済の持続力を高めるための抜本改革に取り組まねばならない。

費用対効果の見極めを

 自民、公明両党は19年10月に予定する消費税率10%への引き上げに伴う増収分の使い道を変更し、幼児教育・保育の無償化などに振り向けると公約した。その結果、20年度に国と地方をあわせた基礎的財政収支を黒字にする目標は達成できなくなる。

 では基礎的財政収支はいつ黒字にするのか。そのために医療や介護などの社会保障制度をどう改革するのか。具体的な取り組みを盛り込んだ新たな財政健全化計画を早急につくる必要がある。

 日本の国と地方をあわせた借金(債務残高)は国内総生産の2倍を超え、先進国で最悪の状態にある点を忘れてはならない。

 18年度は医療と介護サービスの公定価格である診療報酬と介護報酬が同時に改定される。年末にかけた予算編成では、所得や資産にゆとりのある高齢者向けの歳出をもっと抑制すべきだ。20年度以降を含む社会保障改革の中長期の工程表もつくってはどうか。

 安倍政権は「人づくり革命」と称し、3~5歳児までの幼児教育や低所得世帯の高等教育の無償化などに2兆円を割り当てるとしている。だが厳しい財政事情を踏まえれば、歳出は真に必要なものに絞り込む必要がある。

 私たちは待機児童対策を最優先にすべきだと訴えてきた。仕事と子育てが両立しやすくなれば足元の人手不足を和らげつつ、子を産み育てる少子化対策にもなる。

 3~5歳児を持つ世帯のうち、高所得層まで無償化の対象とする必要があるのか。無償化ありきで待機児童対策が後回しにされないか懸念される。児童手当の見直しの議論が全くないのも問題だ。

 成長力の強化では、自民党が公約で掲げたロボット、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、人工知能(AI)の活用で技術革新を後押ししていく視点は大事である。しかし、そのために打ち出す政策の中心は規制改革でなければならない。

 たとえば金融とIT(情報技術)が融合したフィンテックでは、事業のアイデアに対応して政府が関連する法規制を一時凍結する「サンドボックス」といわれる仕組みが欧州やアジアで導入されている。日本は周回遅れだ。

 経済外交は11月に正念場を迎える。ニュージーランドでは環太平洋経済連携協定(TPP)の見直しや再交渉を求める新政権が近く誕生する。米以外の11カ国によるTPP発効に向けて日本は指導力を発揮してほしい。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は、いまだに解決の糸口が見えない。日米同盟の緊密な協力を土台に、国際社会と連携して北朝鮮を封じ込めていく必要がある。中国や韓国との近隣外交の強化も安倍政権の発足以来の重要な宿題だ。

改憲は丁寧な議論で

 自民党は衆院選で憲法改正を初めて重点公約の柱とした。自公両党に希望の党、日本維新の会など改憲に前向きな勢力を加えると衆院の8割に達し、改憲案の発議に必要な3分の2を超える。

 ただ各党が想定する改憲項目は現状では中身がかなり異なる。自民党は自衛隊の明記のほか、教育無償化、緊急事態条項、参院選の「合区」解消を重視する。公明党はいずれも慎重な立場だ。時代に合わせた憲法論議は大事だが、丁寧な話し合いの積み重ねが有権者の理解を得る近道となる。

 発足からまもなく5年となる安倍内閣は、長期政権ゆえの「おごり」や「緩み」が目立っている。森友、加計両学園の問題では、首相官邸の働きかけや官僚の過度の忖度(そんたく)が影響したとの見方が浮上している。

 足元の景気は堅調で、日経平均株価は23日の終値が史上初めて15日連続で上昇した。しかし日本経済を長期的な視点でみれば、社会保障や財政の将来不安が個人消費や企業の設備投資の足を引っ張ってきたのも事実だ。

 安倍内閣は目先の人気取り政策に目を奪われるのではなく、有権者から与えられた貴重な政治資本を有効に使うべきである。

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