2019年8月18日(日)

加州の山火事、ウィキペディアがリアルタイム情報源
瀧口 範子(フリーランス・ジャーナリスト)

2017/10/26 6:30
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10月8日夜に米カリフォルニア州北部で起こった山火事は、10日近く経った執筆時の17日になってもまだ消えていない。延焼した地域は広大な範囲に及び、住宅も含めて焼失した建物も多数に上る。写真で見ると、焼き尽くされた様子が本当に痛々しい。日本でもよく知られているワインの名産地であるナパやソノマといった地域も含まれている。

「ウィキペディア」に山火事の情報が集まった

「ウィキペディア」に山火事の情報が集まった

今回の火事は広域にわたって何カ所でも起こったのが特徴だ。そのため、ニュースをリアルタイムでフォローするのが難しかった。テレビやニュースのサイトを読んでも、全容が把握できるように感じられない。

そんな状況下で、今回役に立ったサイトが3つあった。

1つはカリフォルニア州森林管理・防火局(Cal Fire)の公式サイトだ。今燃えている場所、治まったところが地図上に示され、ざっと全体像がつかめる。また、現況が簡単に説明されている上、どれだけ消火できたかがパーセントでわかる。さらに詳しく見ようとすれば、避難地域、閉鎖された道路名、シェルターや救援センターの情報などが詳細に出てくる。現地の関係者には本当に有用だろう。

もう1つ納得がいったのは米航空宇宙局(NASA)のサイトだった。人工衛星が捉えた火事の画像をアップしていて、州北部のどの辺りから煙が上っているのかがよくわかる。数日後の人工衛星写真では、風の向きが変わったのか、カリフォルニア州北部からサンフランシスコをかすめて、太平洋へ向かって煙が長くたなびいているのがはっきりと見てとれた。

そして最後に、意外に役立ったのがウィキペディアだった。ウィキペディアは通常、オンライン事典のようにして使う。知らない出来事や人名を入力すれば、有志の編集者たちが書き上げた解説文が出てくる。ところが、今回はまるでリアルタイムのニュース並みにコンテンツがアップデートされ続けたのである。

殊に便利だったのが最後の参照リストだ。解説文で引用した元の情報源がずらりと並んでいる。火事が勢いを増していた数日間は特にリンクが多く、全国紙からテレビ、地元の新聞まで参考にできるリストが挙がった。

中でもごく限られた地域内で配られているような地元新聞が、町の店やホテルがどうなったとか、どこの町から避難した誰がどこに身を寄せているなど、住人でなければわからないような情報を扱っていて、現状が手に取るようにわかった。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

これだけリンクが上げられていると、ともかくどんどん読んでいって、そのうちに全体がどんな感じなのかという感覚がつかめるようになる。通常のウィキペディアの使い方もこれとあまり変わらないのだが、リアルタイムで起こっている切迫した出来事を、ここでこうして読んだのは初めてだった。

難を言えば、火事が収まりかけた頃からリンクの数が減り始めたことである。火事も峠を越え、読む側も一息ついているので、リンクが減っても構わないし、有志による投稿と編集作業によって成り立っているという息遣いも感じられる。

一方でその尻切れトンボな様子が、全体の信頼感まで危うくしてしまっているようにも思えてしまうのは確かだ。最初から最後まで、責任感を持って情報を集めていたのではないのだと感じてしまうのだ。もし、本当にこの項目がこのままで終わってしまったら、今回の火事を歴史的に振り返ろうとした時には今ひとつ参考にならない。

それは考え過ぎというものかもしれない。あくまでもウィキペディア。火事が一番大変だった時に、方々の情報を必死になって集めてまとめ、リンクを貼ってくれた有志がいたことに、大いに感謝すべきなのである。

[日経MJ2017年10月23日付]

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