2018年11月14日(水)

背筋の凍る思いがしたテンセント幹部の発言
西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

2017/10/20 6:30
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事業会社のスタートアップへの出資や戦略的パートナーシップ提携、オープンイノベーションは世界的なトレンドになっている。この分野でもっとも早く動いた米国の成熟企業、例えばゼネラル・エレクトリックやインテルなどでは、これらの「コーポレートベンチャリング活動」は会社のコア機能に組み込まれている。

一方、新興国では、自国産業の活性化を国家プロジェクトに位置づけている国が多く、シリコンバレーにもそうした目的を持った派遣団を送り込んでいる。中でも顕著かつ驚異的なのが中国であり、ここ数年かなりの出資案件で中国企業の名前を見るようになっている。そのオファーもかなりアグレッシブである。

先日香港で行われたコーポレートベンチャリングのイベントにおいて、中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)の出資部門トップの話を聞いて背筋が凍る思いをした。

彼は「我々の現事業は10年後にはなくなっていると確信している。だから、今稼いだお金は全て次の事業創出のために投資する」と明言した。テンセントは1998年創業で時価総額が20兆円を超える急成長企業だ。その彼らがこれだけ必死に「次」に投資している。

日本勢も非常に多くの企業が活発に活動している。こちらでも話題になっているのはソフトバンクグループがサウジアラビアなどと発足させた10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」だ。それはユニコーン(時価総額10億ドル以上の未上場企業)級企業への多額出資を次々と行っているからだ。新しい価値を生み出すかもしれない事業に対し、早い段階に出資・協業して共に成長するというのがスタートアップ投資の基本だ。すでに事業の価値が認められている段階の企業への大型出資は奇異に映る。

だが、それは1つの日本型(ソフトバンク以外にそれがやれる企業があるかどうかは別として)コーポレートベンチャリングなのかもしれない。彼らが掲げている「情報革命の加速」というビジョンに対して、その要素となり得る企業とグローバルなアライアンスを組み、新たな価値の創出を連続的・長期的に行っていくという目的に合致しているからである。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

日本らしい特徴的な動きとしては「One Japan」という大企業の若手中堅層の集まりもある。異分野の組織が集まって社会的課題の解決に取り組む「コレクティブインパクト」を通じて自社の活性化や社会への提言などを行うというものである。こうした活動から次代を担う真のイントレプレナー(企業内起業家)が出てくるのかもしれないと期待している。

日本の地方自治体でも様々な動きが出ている。福岡市はエストニアやニュージーランドの最大の都市のオークランド、シンガポールなどとの提携や連携を次々と発表し、福岡を「起業の街」にしようとしている。浜松市でも「浜松バレー構想」を打ち上げ、ヤマハ河合楽器製作所、スズキ、ホンダの創業の地として、「やらまいか精神」「ものづくり精神を極める」などのコンセプトを打ち出している。

新事業開発やコーポレートベンチャリングは新しいことに挑戦し、新たな機会を獲得することが目的だ。このように色々な動きが世界的に起きている現実を理解すれば、多数の競合がおり、機会の獲得競争にしのぎを削っていることがわかる。「今、そこにある機会は明日には消えてなくなるかもしれない」という緊張感を持って動くべきだと強く感じている。

[日経産業新聞2017年10月17日付]

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