春秋

2017/10/16 1:14
保存
共有
印刷
その他

京都の二条城へ行くと、大政奉還の「現場」を見ることができる。ちょうど150年前の秋、最後の将軍・徳川慶喜は討幕派の機先を制して政権を朝廷に返す決意をした。諸藩の重臣が集まり、上座の慶喜と向き合ったという二の丸大広間は二条城見物のハイライトだ。

▼誰もが頭に描くのは、苦渋の将軍を前に大勢の重臣が平伏しているシーンだろう。映画にもよく出てくるが、もとは教科書にも載っていた邨田丹陵の日本画「大政奉還図」だ。あれは大広間ではなく、黒書院で慶喜が側近に意図を伝えた場面らしい。しかし雰囲気のある絵だから大政奉還のイメージとして定着していった。

▼事実はいろいろ異なるという。仏教大の青山忠正教授が調べた越後新発田藩の家臣による記録では、大広間に重臣が集められたが出てきたのは幕府の老中だった。上表文の素案など書付3通への意見を問い、そのあとに6人の重臣だけが居残って将軍に面会したようだ。大勢の前での慶喜の重大発表はなかったことになる。

▼あんがい事務的に歴史は動いたわけだが、これを機に討幕派が王政復古のクーデターを敢行し、戊辰戦争が始まる。150年前の今ごろはとにかく大変だったのである。そういえば政局二転三転、当節の話と比べたくなるがスケールが違うからやめておこう。秋深まる二条城を訪れ、誰それの顔など思い浮かべたくもなし。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]