全世代よりメリハリの社会保障に

2017/10/13 23:03
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年金や医療・介護、生活保護を含む社会保障の課題は、少子化と高齢化・長寿化が同時に加速するなかで制度の持続性を高めることに尽きる。給付の野放図な膨張を抑える制度改革と社会保険料・消費税の一体改革を通じた必要財源の確保が欠かせない。

リスク・リターン下げ

戦後ベビーブーム期に生まれた団塊世代すべてが後期高齢者になる2025年以降を見据えれば、それは政治が真っ先に取り組まねばならない課題だが、与野党の衆院選公約は言葉を濁している。

それどころか多くの政党が保育や教育の無償化を看板にし、ばらまきに走る傾向が目立つ。全世代への社会保障と言えば聞こえはいいが、保険料・税を払う有権者は立ち止まって考える必要がある。将来世代に過重な負担を押しつけないために、メリハリを利かせた改革を与野党は競ってほしい。

経済協力開発機構(OECD)基準による社会支出は15年度に119兆円を突破した。国の一般会計予算を優に上回る巨費だ。大きすぎる給付が制度そのものを危うくする高リスク・高リターン型からの脱却が必要である。

現在、年金は消費者物価の下落時に名目額を減らさないようにしているが、物価連動の原則に照らせばこれはおかしい。政治による積年の人気取り策が年金財政をむしばんでいる。

むろん一律抑制は乱暴だ。高齢世代内の経済格差は大きい。ある程度の収入・資産を持つ受給者への年金課税を強め、その分を基礎年金財源に回せば格差は和らぐ。

今年度、厚生年金の保険料率はついに関係法が定める上限の18.3%に達した。給付抑制という痛みを高齢有権者に求める改革の実現には本来、与野党が大きな線で合意するのが望ましい。

年金や生活保護を廃止して全国民に所得制限なしで現金給付するベーシックインカムを希望の党が公約したのは、唐突にすぎよう。制度設計、財源、導入の道筋を示せないなら論評にも値しまい。

医療・介護改革はより緊急度が高い。過去10年ほど、実効性ある改革が実を結んでいないからだ。

公の健康保険の給付範囲をある程度絞り、市販薬と成分や効果・効能が変わらない処方薬は患者の自費負担にしたり、健康保険が利かない先進医療と保険診療との併用範囲をもっと広げたりする。こうした改革が必要な理由を真摯に説く候補者をみたい。

生活習慣病を抱えた後期高齢者の増大は医療構造の変革を迫っている。医学教育の充実を図り、種々の病気をひと通り診られる家庭医の養成を急ぎ、専門医と機能分担させるのも政治の役割だろう。

高齢者医療の財源の一部を現役の働き手と事業主が負担する健康保険料から召し上げるやり方は、限界に来ている。保険原理が働きにくいこの層への医療費は本来、消費税増税で賄うのが筋だ。

介護サービスの需要増大にはどう応じるのか。たとえば外国人材をもっと生かす手立てを各党はわかりやすく説明してほしい。

保育にもっと民の力を

19年10月の消費税増税分の一部を教育無償化に使うと首相が表明し、自民・公明両与党が公約にしたことで教育費の負担問題が焦点になった。競うように、希望の党は保育園・幼稚園の無料化を、立憲民主党は児童手当や高校無償化への所得制限廃止を公約した。

年間出生数が100万を下回る超少子化が現実になった。若い有権者は子育て支援の充実を熱望している。だが単に現金給付を増やしたり、多額の公費をつぎ込んで施設をむやみに建てたりするのは、持続性ある政策とはいえまい。

待機児童を減らすのは容易ではないが、費用対効果を重視して実効性が高い対策を考えてほしい。民間の力を生かし、小学校入学前の子供全体に保育サービスを行き渡らせる規制改革を徹底させれば「待機児童」は死語になろう。

主婦の就労意欲をそぐ税・年金改革も待ったなしである。

また与党が掲げる低所得層への高等教育の無償化に、経営努力が足りない国公立校や学校法人を延命させるおそれはないだろうか。

欧州主要国は若者の社会保障を拡充させつつ年金や医療の効率化に余念がない。国の財政が破綻の危機に直面する日本に、全世代にいい顔をする社会保障はなじまない。大切なのはメリハリである。

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