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次世代原発「高温ガス炉」開発再始動へ 東欧と協力

編集委員 久保田啓介

いまの原子力発電の主流である軽水炉より安全性が高いとされる次世代原子炉「高温ガス炉」の開発が再始動する。政府がインフラ輸出をにらみ、ポーランドとの共同研究が動き出すからだ。東京電力福島第1原発事故後は日本国内での建設が難しくなり、技術開発は凍結を迫られた。だが海外立地を視野に実用化の可能性も出てきた。

高温ガス炉は、軽水炉のように炉心の熱を水で取り出すのとは違い、ヘリウムガスを循環させて熱を取り出す。ヘリウムは化学反応や蒸発が起きにくく、炉を自然に冷やせるため原理的に安全性が高い。セ氏700度以上の熱を取り出せ、発電だけでなく地域冷暖房などの熱供給もできる。

国内では日本原子力研究開発機構(JAEA)が1980年代から開発に取り組んできた。茨城県大洗町に出力3万キロワットの実験炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」を建設し、2001年にフル出力で運転を始めた。04年にはセ氏950度の熱を取り出すことに成功し、この数字はいまも世界最高記録だ。

だが11年に東日本大震災が起こり、次のステップである実証炉や実用炉の建設構想はしぼんだ。電力会社は既存の原発の再稼働に手いっぱいで、新型炉の導入を検討する余裕がない。原発の安全性をめぐる国民の不安も強く、実証炉の立地点を選ぶのも容易ではない。

一方で、原子力推進派の自民党議員らが集まり、高温ガス炉の実用化を後押しする議員連盟が発足。政府は14年に決めたエネルギー基本計画で「研究開発を国際協力のもと推進する」と明記した。ただ協力の相手国や実証炉の建設について踏み込んだ言及はなく、「机上の計画」との見方も多かった。

潮目が変わったのが今年5月、日本とポーランドの両国政府が結んだ包括的な経済協力「戦略的パートナーシップ行動計画」に高温ガス炉の共同開発が盛り込まれたことだ。

東欧諸国はもともとエネルギー供給で石炭への依存度が高く、二酸化炭素の排出を減らすため原子力に関心を示してきた。ただ電力網の整備が先進国ほどは進んでおらず、世界で主流の150万キロワット級軽水炉を導入するにはコスト負担やリスクが大きい。

一方、高温ガス炉は出力20万~30万キロワットと軽水炉より小さく、人口数十万人規模の都市の近くに建設すれば電力を無駄なく使える。冬の寒さが厳しい国にとっては熱を利用できる点も長所になる。

ポーランドはこうした点に注目し、研究機関同士でも日本と協定を締結。JAEAの研究炉は現在、福島第1原発事故後にできた規制基準に照らし原子力規制委員会が審査中だが、合格すれば研究が本格的に再開する。

これで実用化への展望が開けるかは、まだ不透明な点も多い。ひとつが、日本の技術開発が停滞している間、中国が急速に力をつけてきたことだ。

中国は清華大学が中心になり、出力25万キロワットの実証炉2基を建設。18年の運転開始を目指す。ポーランドへも技術を売り込んでいるとみられ、日本にとって手ごわいライバルになりそうだ。

日本としては、まず政府全体で支援体制づくりが欠かせない。これまでの研究炉は文部科学省とJAEAが主導してきた。本気で実用化をめざすなら、参加企業を束ねたり、輸出保険などの制度を整えたりする必要がある。これらは経済産業省の役目だが、文科省とどう連携するのかまだはっきりしない。

企業の参加姿勢も問われる。政府は昨年、高速増殖炉原型炉もんじゅの廃炉を決めた代わりに、新たな高速炉を開発する計画を打ち出した。日立製作所三菱重工業などの参加が見込まれているが、高温ガス炉の関連技術を持つ企業もほぼ同じ顔ぶれだ。

企業側からは「高速炉、ガス炉ともに政府がどこまで本気なのかわからない」と戸惑う声も聞こえる。政府が2つの炉の位置づけや開発計画を明確に示すことも必要だろう。

[日経産業新聞2017年10月12日付]

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