トップ > 社説・春秋 > 記事

社説

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

17衆院選 次世代に責任ある経済政策論議を

2017/10/11付
共有
保存
印刷
その他

 衆院総選挙が10日公示され正式に選挙戦がスタートした。衆院解散に打って出た安倍晋三首相は、2019年10月に予定する消費税の使途拡大について国民に信を問うとしているが、選挙戦では経済政策の全体像に踏み込んで議論すべきだ。

増税見送りは無責任

 12年12月に安倍政権が発足してからもうすぐ5年。政権は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢からなる経済政策、アベノミクスを推進した。

 12年末から始まった景気拡大は9月で戦後2番目の長さになったもようで、首相が主張する通り名目国内総生産(GDP)は50兆円増え、雇用も大きく改善した。一方、政府・日銀の合意で掲げた2%の物価目標は、黒田東彦日銀総裁のもとでの異次元緩和にもかかわらず達成していない。

 民主党政権下の与野党3党は、消費税率の2段階での10%への引き上げを決めた。安倍政権は8%への引き上げは14年4月に予定通り実施したが、10%への引き上げは2回延期した。

 安倍首相は、19年10月に消費税率を予定通り上げるが、その増収分5兆円強のうち約2兆円を教育の無償化などへの新規歳出に充てるという。この結果、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を20年度に黒字化する財政健全化の目標も先送りした。

 衆院選前の野党再編で民進党が分裂し、希望の党と立憲民主党が新たに立ち上がったが、野党は19年の消費増税見送りで一致している。与党の主張する教育の無償化には野党から異論はなく、消費税率を予定通り上げるかどうかが、今回の選挙の主要争点となった。

 与党の消費税の使途変更も、本来は財政健全化に充てるべき税収を新規歳出に回す政策で、実質的に赤字国債を出すのと変わらない。与党案でも財政規律は緩んでいるのに、消費増税凍結という野党の主張はさらに無責任といわざるを得ない。

 希望の党は増収策として、企業の内部留保への課税を掲げているが、経済政策としても、財源確保策としても問題のある政策だ。業績が好調な企業がもっと賃上げや投資にお金を使うように促すことは重要だが、増税を使って圧力をかける手法には問題がある。国会議員の定数・報酬削減や行政改革など希望の党や日本維新の会が主張する「身を切る改革」も教育無償化の財源としては不十分だ。

 教育の無償化という政策は国民には心地よく響く。重要なのはその費用対効果をしっかり検証するとともに、限られた財源をどう配分するかという点だ。

 少子・高齢化の進展で、年金・医療・介護などの社会保障費は急激に膨らんでいる。そこに教育の無償化など次世代への投資を追加するだけなら、財政は大きく悪化する。教育へ使うお金を増やすならば、所得や資産を持つ高齢者への給付削減など歳出を抑制する必要がある。

成長戦略も議論深めよ

 首相は、教育の無償化も含めた「全世代型社会保障」を掲げている。この政策を実施するのならば、社会保障の制度改革にも踏み込んだ配分見直しや、10%に引き上げた後の消費税の扱いなど中長期の財政健全化策もあわせて決めるべきだ。

 希望の党は、すべての国民に最低限の生活に必要なお金を配るベーシックインカム(最低生活保障)を掲げたが、中身は極めてあいまいだ。野党とはいっても、財源対策から逃げずに、政権をとった時に次世代に負担を先送りにせずにすむ社会保障や財政健全化の道筋を示すのが責任ある態度だ。

 安倍政権は成長戦略を掲げたが、規制改革や働き方改革など生産性向上につながる構造改革は金融緩和や財政出動に比べると歩みが遅い。希望の党が、既得権益やしがらみを排した規制改革の推進を訴えているのはもっともだ。

 安倍政権は生産性革命を掲げているが、生産性を引き上げるための規制改革や労働市場改革などについては、もっと活発に議論してほしい。

 今後の選挙戦で各党は、消費税を上げる、上げないという問題だけでなく、10年、20年先も見据えた日本経済のあるべき姿とそこへの道筋についての議論を深めてほしい。

社説をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

関連キーワードで検索

安倍晋三黒田東彦経済政策日本銀行民主党衆議院

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報