2017年12月17日(日)

店で試着しネットで購入 青山、実店舗の新しい形模索

コラム(ビジネス)
2017/10/11付
保存
共有
印刷
その他

 紳士服最大手の青山商事がインターネットと実店舗を融合させた販売手法を広げている。核となるのは「店舗で試着し、ネットで購入」をコンセプトにした新型店だ。昨年10月に東京・秋葉原に実験店を開業したのに続き、今年9月に新たに2店を都内に出店した。ネット通販の広がりを踏まえ、ネットと共存できる新しい小売店のカタチを探っている。

店内の大型タッチパネルを使い、スーツをネット通販サイトで注文する(東京都調布市の店舗)

店内の大型タッチパネルを使い、スーツをネット通販サイトで注文する(東京都調布市の店舗)

 次世代型店舗は「デジタル・ラボ」と名付けた。「洋服の青山」の小型店と位置づける。来店客はスーツを試着した後に、店内の大型タッチパネルやiPadを使って商品を自ら注文する仕組みだ。

 顧客は青山商事が運営する通販サイト上の1000万点以上の在庫の中から商品を選び、店頭で店員に採寸してもらったり、素材の感触や着心地を確認したりしてから注文できる。商品を持ち帰る必要がない。最短で2日で自宅に届き、補正した商品を受け取るために再び来店する必要もない。通販サイトでの購入が前提だが、店に在庫があれば持ち帰りも可能だ。

 青山商事EC事業部長の石矢浩氏は「ネット販売を前提にすることで、小型店でも大型店並みの品ぞろえを実現できる」と説明する。例えば、通常の店に1つの品番の商品を入れようとすると、Y型の3~7やA型の3~7など複数のサイズがあるため、少なくとも10~20着を用意しなければならない。

 一方、新型店は原則、1つの品番について1つのサイズだけ置く。「Y3は紺のストライプ、Y4はグレーの無地」といった具合に置き、同じ色柄のものを並べない。

 ブランドとサイズが一緒であれば着心地は同じであるため、店頭在庫を試着用の見本のように使う。顧客は「色柄はこちらのストライプのスーツがいいが、サイズはこのスーツと同じものでお願いします」といった注文のしかたになる。

 「洋服の青山」の一般的な店は、スーツを常時2000着ほど在庫で抱えておく。このため面積も500~700平方メートルほど必要だが、新型店であればスーツの数は4分の1程度で済み、面積も170平方メートル程度あれば運営できるという。

 「コンビニ程度の広さでも出店できるため、これまで面積が足りずに諦めていた駅前立地などにも出店できるようになる」と石矢氏は話す。昨年出店した秋葉原電気街口店は堅調で、9月に出店した2店も順調な滑り出しという。

 デジタル・ラボはもともと小型店でも品ぞろえを充実させるためにネット通販との融合連携を進めた取り組みだが、さらに作業効率の向上という副次効果もあった。店頭の在庫があまり変動しないため、店員が商品を発注して補充する仕事が減ったほか、スーツの補正を店頭でする必要がなくなったのだ。「時間に余裕が生まれ、販売スタッフは接客業務に集中できるようになる」(石矢氏)と期待する。

 若い世代を中心にネット経由で服を買う消費スタイルが広がっている。経済産業省によると、2016年の衣類・服飾雑貨などの国内ネット通販市場は前年比11%増の1兆5297億円。衣料品の1割がネット通販経由になった。

 ある大手アパレル経営者は「ネット通販への移行が進むなか、どこまで実店舗を出していいのかわからない状況にある」とまで話す。そうした時代になじむ実店舗はどんなものか。役割を再定義する必要もあるようだ。

 店舗で試着してネットで注文するという手法は、青山商事のほかに丸井などでも例がある。ネットの利点を取り入れることで店舗の役割を進化させようという取り組みは、ほかの小売業にとってもヒントになる可能性がある。(鈴木慶太)

[日経MJ2017年10月11日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報