2019年4月23日(火)

春秋

2017/10/9 1:17
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「忠臣蔵」の吉良邸討ち入りは12月14日とされるが、実はその2日後には早速芝居として上演され、物見高い江戸の庶民を大いに沸かせたらしい。劇作家の別役実さんが、演劇評論誌「悲劇喜劇」(早川書房)の先月号で「真偽は定かでない」と断りつつ紹介している。

▼当時、演劇は「メディア」だった。ゆえに大事件を戯曲として速報するノウハウがあったに違いない。芝居屋は噂話などを通じ、事件の背後を知り、固唾をのんで討ち入りを見守っていた。義士たちは世の空気にも背中を押され、決行したのではないか、と別役さんは推理する。社会と芸能に関する洞察力に満ちた論考だ。

▼先週、東京・両国の寄席をのぞいたら「堪忍袋」という演目が掛かった。ケンカを繰り返す夫婦が、手縫いの袋に不平不満を吐き出し気分をリセットしたところ争いが収まり近所の大評判に、という筋だ。三遊亭竜楽さんは、堪忍袋を借りに来た面々に、「希望の党」を排除された人、排除した人を登場させたから大喝采。

▼トリは質屋の婿養子が相次ぎ早死にする古典落語「短命」。今でいう「美魔女」の妻に活力を奪われたのが原因、という艶っぽい噺(はなし)だ。どこか政局の行方も連想させる演目構成だった。別役さんのいうメディアとしての大衆芸能の面目躍如だ。「劇場型」といわれる総選挙は、あすが公示日。結末は悲劇か喜劇か不条理か。

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