2017年12月18日(月)

アップルやスタバに学ぶ 安価で緻密なネット顧客調査
野呂 エイシロウ(放送作家・戦略PRコンサルタント)

コラム(ビジネス)
2017/10/12 6:30
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 先日のことだ。発売されたばかりの「アップルウオッチ3」を購入した。音楽データを時計に反映する方法が分からなかったので検索。公式サイトの指示通りにすると、問題が解決した。すると画面にアンケートが登場したのだ。アップル側の対応を尋ねられた。「非常に満足」と回答した。

動画視聴の状況を分析したブライトコーブの画面

動画視聴の状況を分析したブライトコーブの画面

 以前はハガキで答えていたような顧客アンケートも、最近はネットでまかなわれることが多くなった。高級旅館「星のや」も宿泊後、アンケートがメールで届く。スターバックスコーヒーも時々レシートに番号が出て、ネットに接続しアンケートに答えると1杯無料の特典がつく。

 顧客の心理をどう探るか。企業はそのための調査を専門会社に依頼するが、ただそうした調査は外資系企業が担っているケースが多く、億円単位を費やす企業も珍しくないという。

 しかしネットがそのコストを下げた。割安な調査を提供する日本企業も出てきた。最近面白い例を見つけた。EmotionTech(東京・中央)だ。7月に特許を取得した、アンケートの回答から顧客の感情を分析する最新技術を使い、顧客満足度の向上を支援している。

 auウォレット関連サービスなどに携わるKDDIフィナンシャルサービスは、クレジットカード利用者にどのような体験を提供すれば顧客満足度の向上に寄与するのかを調べ、既存サービスの改善点を洗い出したという。エイチ・アイ・エスは対面型サービスの改善に生かしているそうだ。

 EmotionTech代表取締役の今西良光氏は「企業は新規顧客の獲得にはお金を使うが、既存顧客の満足度向上には多くのお金を投資したがらない。そこを効率的にできる環境を提供すれば、企業に支持されると考えた」と説明する。

 顧客の心理や属性を効果的に探る取り組みは、動画配信サービスなどでも取り入れられている。興味深いのがブライトコーブ(米マサチューセッツ州)のシステムだ。すでに日本でも活発に使われており、バーチャル高校野球などの動画配信に活用されているという。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

 世界的にはユーチューブなどよりも早くから配信サービスを始めていた、動画配信の「老舗」でもあるが、一般消費者があまり知らないのは「企業向けに配信システムを提供できるのが強み」(シニアマーケティングディレクターの松本達彦氏)だからのようだ。

 企業がブライトコーブを頼るのは、その動画を「誰が見ているのか」「スマートフォンなのかPCなのか」「どれくらいの時間見るのか」などの属性や嗜好のデータがきめ細かくわかるためだ。アンケートに答えてもらうのとは違って、視聴者側は自ら情報を提供しているという意識は感じないだろう。

 集まった情報から、どんな広告がよいかも調整できるという。テレビの視聴率とは違ってかなり綿密に調査でき、それが大きな価値を生んでいるわけだ。

 同社は最近、企業向けに新しいサービスも始めた。社員教育用のeラーニングなどに動画を使うサービスだ。これまで一般消費者たちが視聴するための動画配信に使われていたシステムを社内向け配信に応用したもので、「社員の誰が見たのか」「どこまで見たのか」などを詳細に把握できる仕組みだ。

 いずれにせよ、ネット社会が進んだいま、消費者は常に調査されていると言ってもいい。そのうち、このコラムを読んだ人の性別や年齢、地域、属性などもわかるかもしれない。

[日経MJ2017年10月9日付]

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