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IT投資を生産性の向上につなげるには

2017/10/6付
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 モノがネットにつながるIoTや人工知能(AI)が話題にならない日はない。いま開催中の国内最大のIT(情報技術)見本市「シーテック」では、最先端のロボットやAIに触れようと10万人を超える来場者が見込まれる。

 政治の世界でも関心は高い。次期衆院選に向けた自民党の公約は「ロボット・IoT・AIといった生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーションを起こし(中略)働く皆さんの所得を大きく増やします」と、夢のような未来像を盛り込んでいる。

 だが、ITを導入しさえすれば生産性が自動的に上昇し社会の各層に恩恵が及ぶわけではない。

 日本経済研究センターの調査によると、日本のIT投資は必ずしも生産性向上に結びついていない。とりわけ情けないのはサービス業の実績だ。

 金融や建設、飲食などの業種では、ITに投資すればするほど生産性が低くなる、という負の関係があることが判明した。

 効率化に寄与するはずのIT化が、むしろ足を引っ張るのはなぜなのか。大きな理由は、古い仕事の仕組みや組織の体制を温存したままITを導入しても効果は薄い、ということだ。

 逆に、IT化と連動して事業の見直しにまで踏み込めば効き目は大きいだろう。銀行であれば、ITシステムの強化でネットバンキングを充実する一方で、街の店舗やATMを絞り込んで投資にメリハリをつければ、生産性の向上に直結するはずだ。

 こうした会社の方向性を決める意思決定は、ITの専門部署ではなく経営トップの仕事である。「ITを使って会社を変える」という戦略性を、これからの経営者はもとめられる。

 IT技術者の人事については年功序列からの脱却と若手の登用が急務だ。AIに詳しい松尾豊東大特任准教授は「日本でも若いAIの専門家が育っているが、大企業の多くは彼らに十分な活躍の場所を与えず人材を無駄遣いしている」と指摘する。

 AIやIoTを含む広義のITをうまく使いこなせれば、人手不足の緩和にも役立ち、日本経済は強くなるだろう。だが、技術を新しくしても組織や仕事のありようが旧態依然では、威力を発揮しない。バラ色のビジョンを振りまく前に、官民のリーダーはそんな現実を直視してほしい。

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