カタルーニャ混乱への懸念
スペイン北東部カタルーニャ自治州の独立問題をめぐる混乱が深まっている。住民投票で賛成が多数だったとして独立への動きをみせる州側と、投票そのものを憲法違反として認めない中央政府の対立が解けない。
投票を断行した州側の一方的な行動には問題が多く、懸念せざるをえない。関係者はこれ以上対立をエスカレートさせず、早急に事態を収拾してもらいたい。
独自の文化や言語をもつカタルーニャはスペインでも豊かな地域で、自治や独立を求める機運が根強い。納めた税金が他の地域に使われ、自治も抑えられているといった不満が、1日に強行した住民投票の背景にあったようだ。
州政府は投票で独立賛成が9割を占めたとしている。しかし、投票率は4割強にすぎず、これでは住民の多数の支持を得たとはいいがたい。そもそも憲法違反の住民投票をもとに結果の尊重を訴えても正当性はない。
混乱が不可避にもかかわらず、投票を強行した州の行動は行き過ぎといわざるをえない。独立宣言に踏み切っても認められる可能性はなく、国際社会の理解も得られないだろう。
一方、ラホイ首相の中央政府は投票を妨げようと警察を動員し、住民との衝突で多数の負傷者が出た。法を守るためとはいえ、強硬な態度が住民の反発を招き、対立を深めた面もあったようだ。
州側を非難するだけでなく、対話によって住民の要望に耳を傾ける姿勢も必要だろう。
カタルーニャ州は製造業など産業の集積地として発展し、多数の日本企業が拠点を置いている。独立の動きがもたらす影響は大きく、混乱が長引けば事業展開への打撃は避けられない。
分離独立運動の激化は、スペインのバスク自治州や英スコットランドなど、欧州の他の地域の動きに影響を及ぼす可能性もある。法にもとづく民主主義の尊重という原則にたって、冷静に問題を解決してほしい。