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省エネモーター向けレアアース 国際リサイクルに商機
三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚

2017/10/5付
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 省エネは二酸化炭素(CO2)削減の一丁目一番地だ。大量にエネルギーを消費する電力や鉄、セメント、化学などの装置産業、さらには家電やオフィスのCO2削減市場の拡大に目がいくが、それを支える部品や素材にも大きなチャンスがある。

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 電力は動力源、光、熱源として使われる。動力源と言ってもピンとこないかもしれないが、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサー、エレベーターや自動ドア、工作機械を動かすのはモーターであり、火力発電所はモーターの一種であるポンプなくしては動かない。電力の半分が動力源として消費されており、モーターなどによる世界全体のCO2排出量は日本の排出量の約7倍相当にもなる。省エネはモーターからとも言える。

 モーターの省エネ化の鍵を握るのが強力で小型の磁石だ。最も強力な磁石として知られるネオジム磁石は日本人が発明、改良してきたものだが、電気自動車(EV)の普及や風力発電の増加で2030年の市場規模は2倍以上とも言われる。しかし、市場が拡大すれば新しい問題も出てくる。

 ネオジム磁石は高温になると肝心の磁力が低下する弱点があり、ジスプロシウムと呼ばれるレアアース(希土類)を加えることで高性能と価格を実現させている。ところがジスプロシウムの高品位の鉱床は中国に集中しており、世界生産の約9割が中国だ。

 1カ国に生産が集中し、かつ重要となれば生産国にとっては戦略物資となる。事実、中国が外交上の駆け引きからレアアースの輸出を停止したことがあった。そこでジスプロシウムの含有量を減らす技術や代替品の開発、さらには沖ノ鳥島周辺深海の資源開発による国産化など様々な努力が続けられている。またリサイクルも欠かせないだろう。

 しかしリサイクルは一般にコスト高だ。リサイクル紙や都市鉱山が成り立つのは市場に十分な量があることと回収する仕組みがあるため。中国から輸入したジスプロシウムは、ネオジム磁石あるいは高性能モーターを組み込んだ家電や部品などの形で3分の2が輸出されており、日本に残るのは製品輸入を含めて4割強相当とみられている。

 まだまだ使用中の機器も多いため廃棄量は少なく、リサイクルが機能するのはEVや風力発電の需要増による市場規模拡大後だろう。

 また原材料、製品の貿易はサプライチェーンを複雑にしているし、日本企業による海外生産もある。求められるのは国際的なリサイクルシステムだろう。コストと時間がかかる話だが、資源制約は世界共通の悩みであり、リサイクルシステムの確立で実質的な資源保有国になれば資源制約は一転強みに変わる。課題解決のための選択肢は多いほうがよい。

 リチウムイオン電池に使われるコバルトは5割がコンゴ、超硬合金材料のチタニウムは8割以上が中国など、調達リスクはジスプロシウムに限らない。CO2制約というゲームチェンジは部品や素材に新しいチャンスを与えるが、市場拡大がもたらす調達リスクは宿命だ。

 しかし、これを「攻め」の視点でみてはどうか。CO2制約は省エネ型設備や製品の需要を生み、それが部品や素材、さらには代替技術やリサイクル需要につながる。波及効果は大きい。バリューチェーンを逆にたどることで「約束された市場」が見えてくる。

[日経産業新聞2017年10月5日付]


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