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南海地震の情報発信に工夫を

地震の予知を前提にした防災がようやく幕を下ろす。政府は東海地震の予知を出発点にした防災対応を打ち切ることを決め、気象庁もマグニチュード(M)9級と想定される南海トラフ地震について新たな情報を11月から発表する。

1978年にできた大規模地震対策特別措置法(大震法)は東海地震を予知可能とし、首相が警戒宣言を出して被害を減らすとした。だが95年の阪神大震災後、予知が難しいことは研究者の共通認識だ。大震法の見直しは当然で、むしろ遅すぎたといえる。

気象庁が出す新たな情報は、南海トラフ地震の震源域でM7以上の地震が起きたり、地殻のひずみをとらえたりした場合に発表する。政府も、被害が予想される地域の住民らに家具の固定や避難場所の確認、備蓄物資の点検などを呼び掛ける。

大震法の警戒宣言とは違い、鉄道や百貨店に休業を求めるといった強制力はなく、避難するかどうかも住民の判断に委ねるという。

巨大地震の震源域で異常が見つかったとき、気象庁が迅速に発表すること自体は妥当だ。ただ発表の仕方には細心の注意が要る。観測された異常が巨大地震とどこまで関係があるのか、いまの地震学では説明できないからだ。

2011年の東日本大震災では本震の2日前にM7級の地震が起き、後から「前震」とわかった。ただM7級がいつもM9級の引き金になるわけではない。過去の地震を調べると、確率は2%程度とむしろ低いことがわかっている。

こうした不確実さについて説明不足のまま情報発信すれば、社会が混乱しかねない。多くの人が地震を心配して外出を控えたり、商店が営業を自粛したりし、経済活動がマヒする恐れもある。

政府は今後、静岡県、高知県などをモデル地区として防災対応の課題を洗い出すという。異常情報が予知情報ではないことを国民に理解してもらえるのか。まずそれを点検し、情報発信の仕方をもっと詰めるべきだ。

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