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福島第1廃炉の新工程表に無理はないか

2017/9/30 2:30
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 政府は東京電力福島第1原子力発電所の廃炉に向けた中長期の工程表を改定した。溶け落ちた核燃料の取り出しについて、どの原子炉から先に、どんな工法で実施するかを決める時期を遅らせる一方、開始時期は従来通りとした。十分な準備ができるのか疑問だ。

 1~3号機の溶け落ちた核燃料の取り出しは廃炉工程のなかで最難関とされる。当初は原子炉格納容器内に水を張る方法を中心に検討していたが、損傷が多く穴を塞ぎきれないため空気中で取り出す「気中工法」重視に変更した。

 水中での作業に比べ放射性物質の飛散防止や放射線の遮蔽が難しくなる。従来考えていたのとは異なる設備や機器も必要だろう。

 何号機から具体的にどの方法で取り出し、移送、保管するかを確定する時期を1年遅らせて2019年度としたのは妥当だ。ただ、取り出し開始を21年内のままにして無理はないのだろうか。

 水素爆発を起こした炉内の様子はまだほとんどわかっていない。3号機で溶融燃料と思われるものの一部がようやく見えた段階であり、撮影や少量のサンプル取り出しなどによってさらに詳しく調べるのが先決だ。

 燃料の形状や広がり方によって、開発すべき技術なども違ってくるだろう。工法の再度の見直しも必要になるかもしれない。

 東電は日本原子力学会など国内外の学会や専門家の知恵も借り、リスクを最低限に抑えつつ効率的に取り出せるよう念入りに作業手順を詰めなければならない。取り出しがうまくいくかは内部調査と準備の質にかかっており、開始時期は柔軟に考えるべきだ。

 改定した工程表では1、2号機の原子炉建屋プールに保管してある使用済み燃料の取り出し開始時期を、従来計画より3年遅らせ23年度メドとした。

 1号機の格納容器の蓋のずれが見つかり、塞ぐなどの対応が必要になったためだ。2号機は建屋上部の解体やがれき処理に時間がかかるという。見通しの甘さが露呈したが、溶融燃料ではもっと大きな見込み違いもありうる。

 政府と東電が工程を遅らせることに慎重なのは、廃炉の進み具合が住民の帰還計画や地域経済に密接にかかわるという事情もある。しかし、安全かつ着実に廃炉をやり抜くには現実に即した判断が欠かせない。丁寧な説明を積み重ねて理解を得ていくしかない。

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