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世界で普及進む天然ガス車 日本も政策で後押しを
日本総合研究所理事 足達英一郎

2017/9/28付
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 フランス、イギリス政府が7月、2040年までに国内のガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すると発表した。9月には中国工業情報省次官が「化石燃料車の生産・販売の禁止時期に関連する調査を始めた」と語ったことが伝わると、世界では「電気自動車が市場を席巻する」という言説がせきを切ったように駆け巡っている。

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 ただ冷静に見ると、15年の世界の自動車保有台数12億8227万台(国際自動車工業連合会推計)に対して、電気自動車の累積台数は国際エネルギー機関(IEA)の推計によると126万台で、全体の0.1%に満たない。将来も30年で2億台というレベル感だ。世界の自動車保有台数が変わらないとしても、全体の16%弱にすぎない。

 足元の環境変化で、さらに追い風が吹くという見方もあるが、最も積極的な予測でさえ、年間販売台数で電気自動車が化石燃料車を追い抜くのは38年。40年で世界全体の3分の1を占める程度である。ある日突然に主役が入れ替わるとは考えにくい。

 一方、天然ガス自動車という存在がある。15年の世界の天然ガス自動車保有台数は、2233万5773台(ガス・ビークル・リポート誌推計)で、電気自動車のおよそ18倍だ。その開発の歴史は古く1930年代に遡るという。大気汚染物質や温暖化ガスを排出しにくいという利点は、ガソリン車やディーゼル車の代替として長らく注目を集めている。ただ、燃料タンクの設備負担、走行距離の制約、充填スタンドの必要性が普及のネックとされてきた。

 それでも、例えば中国では2015年、国内自動車保有台数の約4%(約400万台)が天然ガス自動車である。これまで普及の遅れていた米国でも、石油価格の高騰とシェールガス革命を背景に天然ガス自動車が見直され連邦政府からの優遇措置が強化されている。

 欧州では03年の50万台から15年には176万台へと急速に普及した。14年10月に公表された欧州委員会の「代替燃料車用設備指令(DAFI)」は、代替燃料自動車のインフラ整備促進を内容にするが、ここでも電気自動車と天然ガス自動車のふたつが重点となっている。

 ディーゼル車がいまは多いトラックやバスなどの分野で、天然ガス自動車への期待が特に大きい。IEAは最大で35年に天然ガス自動車が1億8600万台、全体の10%になる可能性もあるとする見方を、既に11年に示している。普及台数で、電気自動車と双璧をなす伸びが予想されているのである。

 対して日本国内では、電気自動車の話題に比べて、天然ガス自動車への注目度は小さい。これには「普及に努めてきたものの、結局うまくいかなかったからだ」という指摘がある。確かに、都市ガス業界を中心に取り組みが図られ、政府の政策にも位置づけられては来たが、ガス事業者以外の一般企業と国・自治体の導入台数は15年度末で合わせて3万6393台どまりだ。伸び率も低迷している。これには「本気で取り組もうとする自動車メーカーが結局現れなかったからだ」という解説もある。

 しかし、天然ガス充填スタンドなどのインフラは、将来の水素供給を見据えるなら最も親和性が高いという点を見逃すべきではない。国内でも、天然ガス車のラインアップ拡充を発表する自動車メーカーが現れたり、海外の車両メーカーと提携を発表する日本のバス会社が現れたりする事例も出てきている。電気自動車ブームを冷静に見据えつつ、天然ガス自動車の普及を改めて政策的に強化するタイミングが、いま到来していると考えられる。

[日経産業新聞2017年9月28日付]


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