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持続可能な日本への設計図を競え

2017/9/26 8:23
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 安倍晋三首相が28日の臨時国会の冒頭で衆院解散・総選挙に踏み切る考えを表明した。

 2019年10月に予定する8%から10%への消費増税の増収分の使途を見直し、幼児教育の無償化などに充てることの是非を問うという。与野党は衆院選を通じて財政健全化への道筋や社会保障の給付と負担の設計図をきちんと有権者に示してほしい。

財政健全化の道筋示せ

 首相は25日の記者会見で、衆院解散の理由について「社会保障を『全世代型』に転換せねばならない。約束していた消費税の使い道を大きく変える以上、国民の判断を仰がなければならない」と語った。衆院選は10月10日公示―22日投開票となる見通しだ。

 日本経済の最大の課題は成長と財政健全化を両立させ、社会保障を持続可能にすることだ。

 旧民主党政権下の12年6月、与野党3党は消費税率を2段階で10%まで引き上げると決めた。安倍政権は14年4月に8%に引き上げたが、その後は2度にわたり10%への引き上げを延期した。

 3党合意は5%の増税の1%分を社会保障の充実に充て、残りの4%分を年金の国庫負担や国債の償還など財政健全化に回すとしていた。

 首相はこの増税分の使い道に幼児教育の無償化などを加え、18年度から教育・子育てに使う予算を積み増す意向だ。代わりに財政健全化に充てる分を減らすという。

 もろ手を挙げて賛同できる案ではない。

 日本の社会保障は高齢者への給付が手厚い一方、子ども・子育て向けが少ない。首相が若年世帯に目を向けたのは理解できる。

 問題はその手法である。所得や資産にゆとりのある高齢者向けの給付を減らし、その分を若年世帯支援の財源に回すのが正しいやり方だが、首相はこうした「痛みを伴う改革」を素通りしている。

 財政健全化に回す分を使うなら、教育のために新規に国債を発行する「教育国債」と本質的に変わらない。本来は現役世代が担うべき負担を次世代に押しつけるのはおかしい。「社会保障か、財政健全化か」との議論は短絡的だ。

 わたしたちはまず待機児童対策を最優先せよと主張してきた。仕事と子育ての両立支援は、目先の人手不足を緩和できる。長い目でみても、子を産み育てやすい環境をつくれば、出生率が上向く効果も期待できるからだ。

 高等教育の負担軽減は支援が真に必要な人に対象を絞り込み、野放図なバラマキを避けるべきだ。

 首相は記者会見で20年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする目標を先送りすると述べた。ならばいつ黒字にするのか、どんな財政健全化の方策を講じるのかを示す責任がある。

 日本の財政状態は先進国で最悪だ。20年代半ばには団塊の世代が後期高齢者となり、医療・介護の費用が急増しかねない。今から社会保障の歳出を効率化しなければ、いくら消費増税をしても穴のあいたバケツと同じだ。

 経済成長さえすれば、財政問題を解決できるといった幻想も捨てるべきだ。構造改革で潜在成長率を引き上げつつ、さらなる消費増税を検討する覚悟が要る。

なぜいま解散なのか

 発足から4年半を経た安倍内閣は一部に強引な政権運営が目立っている。野党4党は通常国会が閉会した6月下旬に憲法の規定に基づいて臨時国会召集を求めたが、政府・与党は応じずにきた。

 28日召集の臨時国会では首相の所信表明演説や各党代表質問を見送って冒頭に解散する方向だという。これでは野党が「森友、加計両学園を巡る疑惑隠しの解散だ」と批判するのは当然だろう。

 北朝鮮の核・ミサイル開発による緊張が高まるなかでの衆院選は、与党内でも「なぜ今なのか」と戸惑う声が上がっている。

 首相は記者会見で「国民の信任を得て国を守り抜く決意だ。国難を乗り越えていくため、国民の声を聞かなければならない。国難突破解散だ」と強調した。

 解散の理由として北朝鮮の差し迫った脅威を持ち出すのは違和感がある。一方で15年に成立した集団的自衛権の限定容認を柱とする安全保障関連法の評価やミサイル防衛を含む防衛政策のあり方は選挙の重要な争点となる。

 日本はもはや目先の損得勘定で政治をしている余裕はない。各党は超高齢化社会の到来を見据えた骨太の将来ビジョンを掲げ、その具体策を有権者に問うことから逃げてはならない。

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