春秋

2017/9/25 2:30
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日本の郵便制度の父といわれる前島密(ひそか)は漢字の廃止論者でもあった。砲術や帆船の操縦などを学び、英語教師を経て幕臣になっていた慶応2年(1866年)、教育を盛んにするには漢字の使用をやめるべきだとする建議書を将軍徳川慶喜に出した。前島31歳のときだ。

▼国を富ますには人々の知識を豊かにする必要がある。ところが漢字の字形と音訓の習得に月日を費やし、肝心の勉学の成果が出るのが遅れている――。漢字廃止論の是非はおくとして、前島が問題をあぶり出し、改革をためらわない人物だったことは確かだろう。郵便の創業も飛脚便に取って代わる通信制度の刷新だった。

▼東京―大阪間に最初の郵便局ができてから140年以上たつ。その基礎の上にある日本郵政もいま改革を求められている。政府保有の同社株式の追加売却が近づき、市場が評価する成長戦略づくりが課題だ。郵便物は減り、金融子会社も低金利の逆風下にあるが、売却益は東日本大震災の復興財源になるだけに責任は重い。

▼オーストラリアの物流大手トール・ホールディングスを買収したが、業績低迷で巨額の減損処理に追い込まれた。そこに見えるのは相手企業との意思疎通を密にして、M&A(合併・買収)を成功に導く力が弱いことだ。組織の内向き志向を取り払うのは容易でなさそう。前島なら社風の改革にも目を向けるかもしれない。

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