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感情検知の技術に広がり マーケティングに応用も
瀧口 範子(フリーランス・ジャーナリスト)

2017/9/25付
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 先日、テクノロジー関連会議の展示場で、あるブースの前に立った。ウェブカメラが私を含め、その周辺にいた数人の参加者の顔を映している。スクリーンをよく見ると、その顔が四角で囲まれて定義され、その上にそれぞれの今の気分が絵文字で表示されている。

表情から感情を検知(展示場のマイクロソフトのブースにて)
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表情から感情を検知(展示場のマイクロソフトのブースにて)

 これは、最近よく開発されている「感情検出テクノロジー」の一例である。コンピューターが読み取った顔から、「うれしい」「怒っている」「驚いている」「悲しい」などを判断して表示するのだ。気分までコンピューターに見られる時代になったのかと驚く。

 このテクノロジーはかなり前から開発されてきたが、近年ようやく使えるレベルに発展した。そして、応用範囲が幅広いと期待が高まっている。

 検出方法にはいろいろあって、表情を読み取るものや声の調子から判断するものなどがある。ジェスチャーから認識する研究も進んでいる。ともかく人が図らずも露呈している外見から、その人の見えない内面を推定しようというわけだ。

 顔の表情では、目、眉、唇などの動きを認識する。唇ならば、上下唇の中心点と口角との位置の関係性などが判断材料になるようだ。目も同じで、目をかたどる主要点の動きを測定する。他にも、眉をひそめる、頬が上がる、額にしわが寄るなど、人の顔に現れる多様な表情を総合的に分析して最終的な判断をする。

 さて、この感情検出テクノロジーを歓迎するのは、まずはマーケティング関係者だろう。

 ある人が落ち込んでいると検知した場合、気分を高める広告を示したり、安心感を誘うような製品をすすめたりといったことができる。街を歩く人がストレスを抱えているとわかると、リラックスするリゾート旅行の広告をスマートフォンに送れるかもしれない。

 うれしいことがあった人には、いつもよりも少し高めのファッションのクーポンを送信することもあるだろう。財布の紐が緩むときを狙って、効果的なマーケティングが可能になるのだ。行き過ぎには注意しながら。

 すでにこのテクノロジーは、広告の効果やテレビ番組の受容度を確かめるユーザー・テストで多用されている。広告が面白くてSNS(交流サイト)で広まりそうだとか、反対に番組があまりに長くて退屈になっているといったことがわかる。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

 面白い利用方法は、昨年の米大統領選の際に見られた。英国誌「エコノミスト」が候補者の討論会のビデオから顔の表情を読み取り、互いの発言時にどんな感情を抱いていたかを分析したのだ。ある場面では、クリントン候補が驚きと満足を表出していたのに対して、トランプ候補の顔には怒り、驚き、悲しみなどが盛んに入り交じっていたと計測されている。取り繕っているはずの公の場でも、コンピューターが微細に表情を認識するとはびっくりする。

 感情検知テクノロジーはゲームや教育などにも使え、さらに精神医療やリハビリの分野でもモニタリングや治療の判断に利用できるという。あるいはコンサートの観客の表情から会場全体のムードを測り、演奏曲の順番を柔軟に変えることも考えられるだろう。

 ところで冒頭のカメラは感情だけではなく、性別や年齢も想定していた。いったいどうやってわかるのか、周りの参加者は20代と表示されているが、私はちょっと上だ。うれしいことにコンピューターは私を実際年齢よりも若いと勘違いしているものの、どんなに軽やかな笑顔を作ってみても20代にはならない。その時の私のぶぜんとした気持ちも、正確に読み取ってくれただろうか。

[日経MJ2017年9月25日付]


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