2017年12月17日(日)

拡大するESG投資 開示の仕方、評価に影響
日経エコロジー編集部 相馬隆宏

コラム(ビジネス)
2017/9/21付
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 夏をピークに、企業のアニュアルリポートや環境・CSR報告書の2017年度版が続々と発行されている。ここ数年で企業の情報開示は大きく変わってきた。特徴は大きく2つある。

 1つは、売上高や利益といった財務情報と二酸化炭素(CO2)排出量や女性管理職比率といった非財務情報を一体化した統合報告書を発行する企業が増えていることだ。その数は今年1~8月ですでに300社を超えた。「統合報告書の発行数では日本企業が世界でも群を抜いている」(ロイドレジスタージャパンの冨田秀実取締役)

 もう1つは、非財務情報の開示量が増えていることだ。例えば、味の素は昨年から人事データを拡充し、従業員の定着率や離職率、メンタルヘルス休職者率などをCSR報告書に載せている。同社グローバルコミュニケーション部の長谷川泰伸CSRグループ長は、「人事データは情報の質と量が全く変わってきている」と話す。

 こうした動きの背景には、「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」の拡大がある。16年の世界のESG投資額は、約23兆ドル(約2500兆円)に達する。

 海外に比べ遅れがちだった日本でも、約140兆円の資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、今年から本格的にESG投資に乗り出した。新たに、「FTSEブロッサムジャパン指数」や「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」など、ESGの取り組みで先進的な日本企業を構成銘柄とする新しいインデックス(指数)を採用。まずは1兆円規模を投資する。

 この指数は企業を公開情報のみで評価し、構成銘柄を決定する。統合報告書や環境・CSR報告書、ウェブサイトなどでの情報開示の仕方が、長期資金を呼びこめるかどうかに大きく影響するわけだ。

 そうした中、SOMPOホールディングスの情報開示の取り組みは示唆に富む。同社が重視するのは、情報の「探しやすさ」だ。

 これには過去の苦い経験が関係している。「報告書に情報を載せていたにもかかわらず、評価機関に『ノーアンサー(非開示)』と判断されてしまった」(CSR室の後藤愛課長代理)という。従来、ウェブサイトではPDF形式でしか報告書の内容を閲覧することができなかったため、ウェブの検索に引っかからず、情報が見落とされたとみられる。

 そこで、今年から報告書の内容をHTML形式でもサイトに展開し始めた。さらに、評価機関が必要とする情報をまとめたウェブページを作成。サイトの目立つ場所にリンクを表示し、評価機関が容易に見つけられるようにした。

 サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦氏は「機関投資家に株式を長期保有してもらうためには、情報を徹底的に開示する必要がある」と強調する。情報を開示していなければ、「何もしていない」「リスク対応が不十分」ととられかねない。

 大和ハウス工業で統合報告書の制作を担当するCSR部ソーシャルコミュニケーション室の内田雄司室長は、「取り組みが不十分だったとしても情報を開示して、会社としてどう考えているかを説明するのが大事。リスクへの認識を示すのが、一番のリスクヘッジになる」と話す。

 足元の業績が良い企業でも、情報開示をおろそかにすれば評価を下げる恐れがある。

[日経産業新聞2017年9月21日付]

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