2018年9月24日(月)

広がる「観光公害」へ対策を急ごう

2017/9/18 2:30
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 一部の観光地で、訪問客の増加により地域の生活に支障が出始めている。道路の渋滞や交通機関の混雑、マナー面の摩擦などが住民の間に不満を生み、「観光公害」という言葉も使われ始めた。これ以上深刻化する前に、現状の把握と総合的な対策を急ぎたい。

 かつて観光公害といえば、山や海でのゴミ投棄や自然破壊を指した。今は生活環境の侵害が問題となっている。住民の足である鉄道やバスが混む。渋滞で車が使えない。祭りに支障が出る。住宅街で騒ぎ、写真を撮りゴミを捨てる。そうした例が指摘されている。

 観光客は世界中で増えている。欧州では反観光運動が起こり、受け入れ抑制に乗り出す都市も現れた。民泊の普及で空き家が減り家賃が上昇したことも反観光ムードを生んでいる。外国人観光客が急増した日本でも摩擦や弊害への対策は急務といえる。

 分野や地域ごとに個別の対策は始まっている。国土交通省はIT(情報技術)を活用し、渋滞状況の把握と解決策の研究を始める。鎌倉市は地元の江ノ島電鉄で、混雑時には地元住民を優先して駅に入れる社会実験を実施した。

 宅配便業界は、外国人が大きな荷物を路線バスに持ち込まなくて済むよう宿泊施設間の荷物配送に乗り出す。旅行業界は日本のマナーや生活習慣を本国から出発する前に伝える努力を続けている。

 こうした事例や実情を踏まえ、政府はまず、どういう問題が、どの程度の深刻さで広がっているのか、実態を把握してはどうか。各地の情報を共有できれば、自治体がそれぞれの実情に応じ、具体策を工夫するときに役立つ。

 訪問地などの分散も進めたい。かつて静かな地方都市が古い町並みを「小京都」と宣伝し、国内客を集めた例が参考になる。人気観光地と周辺の町が連携し、公共交通機関で足を確保しつつ宿泊先を分散させた例も欧州にはある。

 政府はこれまでのように訪日外国人の数だけを追うのではなく、富裕層など経済効果が大きく、1カ所に長期滞在する層の呼び込みにも力を入れたい。

 住民の不満の裏には、コストやマイナス面だけを負担させられているという意識もあろう。観光収入の増加を目に見える形で地元に還元する仕組みを作るのも一案かもしれない。同じ悩みを持つ世界の町に、日本ならではの解決策を発信したい。

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