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変化に対応するには「戦略」より「仕組み」が重要
野口 功一(PwCコンサルティング パートナー)

2017/9/19付
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 企業戦略が重要と言われるようになって久しい。企業が成長していくには、市場や顧客のどこを攻めるのかを決め、どこに自社の強みや弱みがあるのかを把握する必要がある。行き当たりばったりでなく、ちゃんと考えましょうということである。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

 企業やマーケットが成長期にあるときは、何かを放り投げれば自然に売れていく。そこではいかに効率よく自社の製品やサービスを提供できるかが戦略の鍵となっていた。高度経済成長期の日本では、勤勉で品質を重視する日本企業は、まさにこのような環境で強みを発揮した。製品の素晴らしさ、きめの細かいサービス、品質管理の充実などを武器に、日本のみならず世界を席巻していた時期もあった。

 成長期における企業の強さは、主に「決められたことをいかに正しく行えるか」にあった。その後、経済の成熟化、グローバル化、バブル経済の崩壊などを経て、その強みを発揮しにくい時期が続いている。世の中の不確実性が高まり、経営課題が複雑になるにつれ、「変化への対応力が重要」と言われるようになってきた。

 その対応力を身につけるのは、今になっても難しいと言わざるをえない。大企業では、経営者が考えた戦略をもとに、経営企画部門などに優秀な人材を集めて、素晴らしい中期計画を用意する。しかし、戦略は短命化している。5年から3年、もしかすると2年ぐらいのスパンで経営環境が変わっていくなかでは、100点満点の中期計画を立ててもその実現は難しい。間違った施策を打ってしまう可能性もおおいに考えられる。戦略の無意味化や無力化が激しく起こっているのである。

 企業戦略が重要という「呪縛」にとらわれると、変化に対応できなくなることも多い。先進的と言われるシリコンバレーの企業にも戦略はある。しかし、それは進むべき方向性やビジョンなど、大きなダイレクションを示しているケースが多い。実際のビジネスは臨機応変に柔軟性に富んだ形で行われる。

 投資ファンドなどから資金調達する場合は細かいビジネスケース(事業計画)をつくる。だが、それはあくまでもターゲット(目標)であり、ターゲットを達成するための行動に対する制限もあまりない。大きな方向性やビジョンやターゲットを示したら、後はそれを実現するために自由に動くといった感じである。

 重要なのは戦略の精度ではない。社員が自由に動けるようにするための権限移譲、戦略目標を達成したときの業績・人事評価、小回りの利く組織構成やワークスタイル、部門や社員の枠を超えたネットワーキングや知識共有、失敗を許す文化――。こういった企業の仕組みが重要なのである。「変化に対応できる戦略」ではなく「変化に対応できる仕組み」が求められているのだ。

 こうした話をすると、ベンチャー企業は規模が小さいからできるのだという声があがる。だが、人工知能(AI)に代表される技術の発達によって、主要プレーヤーが突然登場するようになっている。主要プレーヤーになる企業は規模が小さい会社だったり、まったくの異業種の企業だったりする。こうした「境目のない社会」では、大企業でも変化に対応できる仕組みが不可欠なのだ。

 100点満点の戦略を目指すのはやめ、勇気を持って完璧ではない戦略をつくってみてはいかがだろうか。

[日経産業新聞2017年9月19日付]


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