2017年12月19日(火)

マイペースな「ネコ型顧客」、広告メールは逆効果
ネットイヤーグループ社長 石黒不二代

コラム(ビジネス)
2017/9/19 6:30
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 「私はマーケッターとして本来やるべき仕事をしていたのだろうか」。最近、このような疑問を持つようになった。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

 それはあることに気がついたからだ。デジタルマーケティング時代になり、顧客接点が増え、そのため施策の多さも頻度も以前の比ではなくなった。そうした環境におかれたとき、世の中には「ネコ型顧客」が存在することに思いあたった。

 以下は、マーケティング部門におけるよくある風景である。

 マーケティング会議で「購入頻度が高い層にはさらにメールを送ってアップセル(売り上げ増)を狙おう」と意気込む。しかし、お客様の反応は「またメール。正直うるさい」が多数を占める。

 それにもかかわらず、会議では「よく買ってくれる人はSNS(交流サイト)でシェア(投稿)してくれるに違いない」となってしまう。実際のお客様の反応は「このブランドは好きだけど、SNSでシェアするのは面倒だな」である。

 この風景、実はデジタルマーケティング時代以前にもあった。

 例えば、洋服のブランド店で、やたらにお客様に話しかける店員さんを見かけることがある。私などは、放っておいてほしいと思ってしまう。なのに、店員さんはついつい声をかけてしまう。

 動物のイヌは飼い主に忠実といわれている。ネコには自分中心という習性があるそうだ。飼い主をマーケッターや店員に置き換えると、声をかけてほしいと思うお客様は「イヌ型」で、放っておいてもらいたいと感じるお客様は「ネコ型」と分類できる。

 イヌ型はトレンドに敏感であろうとし、欲しいモノはひとまずチェックしてくれる。ネコ型はマイペースで自分への興味が最も大事と考える。イヌ型は聞く耳を持っていてくれる。だからメールマガジンはチェックしてくれる。世間よりも自分が大事なネコ型は、口コミには興味を示さない。お薦めの商品を買ってくれるのがイヌ型で、好きなモノしか求めていないのがネコ型だ。

 世の中には、このように2種類の顧客がいるはずだ。だが、マーケッターと呼ばれている人たちは、顧客をすべてイヌ型として扱ってしまう。その結果「あーうざい」と思っているネコ型の顧客にも頻繁に広告やメールやキャンペーンのお知らせをしてしまっている。

 マーケッターがこんな愚かなことを繰り返していると、いずれネコ型の顧客にそっぽを向かれてしまうに違いない。

 その真偽を確認するため、オンラインでブランドの購入頻度が高い6万人に調査をしてみた。結果は、ブランド側の施策に反応しない人の方が反応する人より多かった。メールマガジンの購読、SNSのフォロー・シェア、イベントへの参加、アプリのダウンロード、クーポンやポイントの利用――。いずれの施策をみても、ネコ型がイヌ型を上回っていた。

 購入頻度が高い顧客には、こうしたマーケティング活動が届かないどころか、嫌われてさえいると考えるべきなのだ。マーケッターは反省し、施策を変えるべきである。

 ネコ型の顧客への施策にはどのようなものが考えられるだろうか。

 ネコ型の特性は、あることをきっかけに、またあるタイミングで再購買をしている点にある。イヌ型ほど反応が明確ではないので、その傾向を見つけるのは難しい。だからこそデータや人工知能(AI)の出番なのだ。自分の目を大切にするネコ型だからこそ、商品の特性や機能を説明できるコンテンツマーケティングの出番でもある。

 こうしてみると、ネコ型にこそ、デジタルマーケティングの最新の施策が適していると言えそうだ。そして、イヌ型流とネコ型流のコミュニケーションを使い分ければ、顧客へのリーチは少なくとも2倍になるだろう。

[日経産業新聞2017年9月14日付]

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