2019年6月17日(月)

サウジ合弁買い増すダウ 米と中東の2極体制へ備え
編集委員 松尾博文

2017/9/18 6:30
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米ダウ・ケミカルと米デュポンが8月31日に統合手続きを終え、世界最大の総合化学メーカー、ダウ・デュポンが発足した。ダウ・ケミカルはその直前、サウジアラビアでの巨大合弁事業について、出資比率の引き上げを決めた。統合直前に駆け込みで中東への関与を強める狙いは何なのか。

ダウはサウジ国営石油会社サウジアラムコとの石油化学合弁会社「サダラケミカル」への出資比率を現在の35%から引き上げ、ダウとアラムコが50%ずつ保有することで基本合意した。実施はダウ・デュポンが18カ月以内に予定する、「農業」「汎用素材」「高機能材料」の3社への再編成後になるという。

サダラはサウジ東岸のジュベイルで、石化の基礎原料となるエチレンを中心に、26品目の石化製品を生産する。200億ドル(約2兆1800億円)を投じる世界最大級の石化複合施設だ。今夏までにすべてのプラントが稼働した。

ダウは農薬や高機能製品に強いデュポンとの経営統合で、高付加価値分野の厚みを増す。同時に決めたサダラへの出資比率引き上げは、ダウが強みを持ってきた汎用化学品でも主導権を握り続ける決意の表れだ。

米国では安価なシェールガスを原料に使うエチレン製造設備の新増設が相次いでいる。ダウ・デュポンも、ダウ・ケミカル時代に米テキサス州で建設してきた年産150万トンのプラントが完成、誘導品製造設備の拡張も進む。

エクソンモービルやシェブロン・フィリップス・ケミカルも新プラントを建設中だ。2017~18年にはこうした設備が生産を始める。経済産業省によれば、米国では21年までに年1100万トンのエチレン生産能力が増える。すでに同500万トンが供給過剰にある米国産の製品は市場を海外に求めざるを得ない。

ダウが米国の増設計画とぶつかりかねないサウジでの事業への関与を強める理由はなぜか。

和光大学の岩間剛一教授は「石油の随伴ガスを原料に使う中東の生産コストはシェールガスより競争力がある」と語る。

シェールガスの増産によって米市場の天然ガス価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり3ドル台に下がった。これを原料に使えば石油精製の過程で出るナフサを使う従来方式よりコストは安い。これが米国で石化生産計画が増える理由だ。

だが、アラムコとサウジ西岸で石化合弁を展開する住友化学は09年の稼働当初、同1ドル以下で原料ガス(エタン)の供給を受けたといわれる。サウジがエタンの公定価格を引き上げた今でも同1.75ドルと、米国市場よりも大幅に安い。

サダラも同水準で原料供給を受けているとみられる。汎用化学品は原料コストと生産規模が競争力を左右する。岩間教授は「中東は原料は安いが生産の安定度には課題がある。米国は石化生産の技術が確立し市場も近い。その両方を持つことに意味がある」と、ダウの米、中東の2極体制への備えを指摘する。

サウジやイランで進む生産増強の結果、中東のエチレン生産能力は21年までに年700万トン増え、域内は同2000万トン超の供給過剰になる見通しだ。米国と中東であふれた製品はアジアに流れ込み、市場を奪い合う。

日本ではエチレン製造設備の稼働率が9割を超えている。化学各社は空前の活況に沸くが、目先の好調に安住してはいられない。

[日経産業新聞2017年9月14日付]

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