スマホアプリの利用者獲得がなぜうまくいかないのか
ジョアナ・ドレイク(コア・ベンチャーズ・グループ ジェネラルパートナー)
消費者を直接の顧客とする企業は、スマートフォン(スマホ)のアプリの急速なはやり廃りを目の当たりにしてきた。アプリのユーザーを獲得するには費用がかかる。しかも、そのためのキャンペーンがうまくいかないことも多い。

そうした中で頭角を現しているベンチャー企業がシリコンバレーにある。当社の支援先でもあるリフトオフだ。同社は「クリック・トゥー・アクション」と呼ぶサービスを企業に提供、キャンペーンの効果を高めている。7月には日本にオフィスを開設した。マーク・エリス最高経営責任者(CEO)にインタビューした。
――クリック・トゥー・アクションを提供しようと思ったきっかけを教えてください。
「私たちはゲームアプリとそれ以外のアプリとでは、マーケティング担当者が直面する課題が異なっていることに気がつきました。ゲームアプリでは、インストール件数をできるだけ少ない費用で増やすことに重きが置かれていました。人はインストールしたゲームアプリを1度は楽しんでみようと思うからです。しかし、ゲーム以外のアプリでは、インストールしても、それを実際に使う人は少ないのです」
「ショッピングのアプリであれば、どうすれば消費者がそのアプリを使って買い物をするようになるのかがマーケティング担当者の最大の関心事です。アプリをインストールした消費者が商品の購買やサービスの利用につながるアクションをするには、どれくらいの費用がかかるのか――。当社はそれを顧客獲得単価(CPA)と名づけています。ゲーム以外のアプリのマーケティング担当者にとって、CPAを抑えることが重要な課題です。それを支援するのがクリック・トゥー・アクションです」
――どのような技術を使ってCPAを抑えるのですか。
「核(コア)となるテクノロジーは3つあります。(1)消費者の属性や特性に合致したモバイル広告をリアルタイムで自動生成するダイナミック広告(2)20億人を超えるモバイルユーザーに関するデータベース(3)CPAにあわせてキャンペーンの内容を最適化する機械学習のプラットフォーム――です。これらのコアテクノロジーが同時に機能することで、パーソナライズ化された広告を配信して収益につながるアクションを増やすキャンペーンが可能になります」
――リフトオフが活用しているデータの量はどのくらいですか。
「現在、1日で1300億を超える数のデータを使っています。これまで主要なモバイル広告会社や通信会社、ネットに関する調査会社などと協業してきました。その過程でデータの蓄積が進んでいます。誰にどのような広告を提供するのかを判断できるようになり、その精度は日々、高まっています」
――定額使い放題のサブスクリプション(購読料)型の収益モデルが普及しています。
「アプリを使い続けてもらうための理由をユーザーにわかりやすく伝える必要性が高まっています。顧客のアカウント(利用者情報)の作成や利用料金の支払いがよりスムーズになっています」
――アプリのマーケティングにおいて、日本と米国との最大の違いはどこにあると考えていますか。
「日本のマーケティング担当者はデータ分析に精通しています。当社は先進的な日本の企業と一緒にビジネスをすることで、業種別や消費者の属性別の精緻なデータを得る方法を学べると期待しています」
[日経産業新聞2017年9月12日付]