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IoTで酒づくり もろみの温度、ロボがお知らせ
野呂 エイシロウ(放送作家・戦略PRコンサルタント)

2017/9/10付
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 新潟県の佐渡島にユニークな日本酒づくりをする酒蔵がある。「尾畑酒造」という酒蔵で、筆者も幾度か足を運んだ。地元の廃校を仕込み蔵に改装し、「学校蔵」と触れ込んで酒造りや交流の場にあてている。活用するのは100%の自然エネルギーだ。校舎脇のプール跡やグランド跡には太陽光発電のパネルを設置している。

 「伝統の酒造りと新しいテクノロジーとの共生にも挑戦している」と専務の尾畑留美子氏。地域エネルギーの自律を含めた持続型社会の構築を目指している東京大学サステイナビリティ学連携研究機構との共同研究プロジェクトだ。太陽光発電により、理論上電力の100%を再生可能エネルギーで賄う。

酒造りに一役買うロボット「モロミ君」と尾畑酒造の尾畑専務
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酒造りに一役買うロボット「モロミ君」と尾畑酒造の尾畑専務

 そんな酒蔵に新たに加わったモノがある。ロボット「モロミ君」だ。

 「ここのお酒は、佐渡のお米と佐渡の太陽のエネルギーで造ってるんだ」。可愛い声で会話するロボットだ。

 「タンク4号の温度はポート1が11.3度、ポート2が10.8度です。データの受信時刻は8月25日9時58分です」。タンクに入っている醪(もろみ)の温度を伝えてくれる。センサーが2つタンクに入っており、ポート1と2は、それぞれの温度計を示す。

 タンク内の温度は場所により一定ではないため、2つのセンサーをつけて測定。通信して、離れたところに置かれたモロミ君に測定結果が届く仕組みだ。それをモロミ君が人に伝えてくれる。

 杜氏の技は経験で得たデータの蓄積の裏付けがあってこその判断が決め手。尾畑酒造では15分ごとに温度や湿度を測定しては自動的に記録し、きめ細かな状況変化を把握しているという。

 それを支えるのがモロミ君だ。モロミ君の「自宅など遠隔地にいても状況がわかるのも安心」と尾畑氏は話す。

 実はこのモロミ君は、酒蔵専用ロボットではない。NTT東日本の「ロボコネクト」サービスを応用している。ロボは「Sota」という。

 NTT東日本ビジネスイノベーション本部の下高原広光氏によると、もともとは農業に使われる「eセンシング・フォー・アグリ」という技術を応用できないかというところから、尾畑酒造と議論が始まったという。話を進めるうちに、ロボコネクトとの連動を思いつき、モロミ君にたどり着いたそうだ。

 「eセンシング・フォー・アグリ」とは、温度、湿度、照度などのセンサーを農地などに設置。それらのデータを無線通信で、自宅や事務所、スマートフォンなどに送れるシステムだ。農作物の生産効率を高めたり、これまで人力で夜通し見張っていた防霜対策などを遠隔地でできたりするようになったという。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

 その技術をお酒に応用。さらにロボットに接続することで、音声で酒タンクの温度を教えてくれるように発展した。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術を詰め込んだロボットが、静かに伝統的な酒造りを進化させている。

 こうした技術はほかに、介護の現場でも活躍中という。話す以外にも、カメラマンになって撮影したり、カメラ機能を使って、遠隔地の様子を確認したり、テレビ電話のような会話も楽しめるという。「将来は自宅のいろいろな家電製品とつながり、制御する日も来るだろう」。下高原氏は先を見据える。

 尾畑氏が引っ張る学校蔵の交流イベントには全国から人が集まってくる。インターネットなどの技術をうまく使えば、離れた島であっても先進的な酒造りに取り組み、外部と交流できるという好例だ。NTT東日本のスタッフも、最近の学校蔵の企画に泊まり込みで参加し、酒造りにも挑戦した。IoTやロボットを活用した酒のお味は。完成が今から楽しみだ。

[日経MJ2017年9月10日付]


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