2017年11月20日(月)

環境分野でデジタル革命 周辺整備が不可欠
三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚

コラム(ビジネス)
2017/9/7付
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 人工知能(AI)、ビッグデータなど呼び名は様々だが、情報の蓄積、データの高速処理、インターネット、それにセンサー技術を統合的に活用するデジタル技術のポテンシャルの大きさは誰もが認めるところだ。

 同分野ではドイツや米国、さらには中国の重電やIT(情報技術)産業の攻勢が目立つ。味方にすれば強いが、出遅れは競争からの落後か、との危機感も強い。とは言え、デジタル革命はまだ十分に使いこなされているとは言えず、これからが本番だ。

 7月末、地球観測・予測データと社会データを高度解析することで社会問題への貢献を目指す文部科学省のプロジェクト「DIAS(データ統合・解析システム)」は、ニーズとシーズのギャップに着目したシンポジウムを行った。

 DIASは2006年度に地球観測情報活用を中心とした国家プロジェクトとして第1期が始まり、10年度にはプロトタイプを開発。現在の第3期では20年度までに民間利用を含め本格的な社会利用を目指している。地球環境情報の蓄積では世界最大規模で、科学技術を活用して超スマート社会を目指す「ソサエティー5.0」への貢献も期待されている。

 シンポジウムではソリューションの研究開発側と、想定される利用側が参加。災害対策、食品と物流、エネルギーの3つの分野で具体的なソリューション開発事例を紹介しつつ議論した。ここから本格活用のヒントが見えてきた。

 起こり得る災害の規模を前提条件に応じて示すハザードマップは減災、避難、復旧の一連の対策を考えるために欠かせないツールだ。都心に張り巡らされた下水道網情報と最新の詳細な気象分析を組み合わせることで、都市型洪水リスクをリアルタイムで道路一本毎に示すことができる。リスクが土地取引価格に反映されるようになれば、リスクに応じた土地利用と対策が進み、被害抑制に貢献するだろう。

 また太陽光発電量は天気によって変動するから需要に合わせて火力発電などで調整している。太陽光発電量を予測できれば、火力発電量を最適化し、最終需要者である国民の負担を減らすことができる。イベントなどによる需要の変化も織り込んで需給を予測すれば、さらに効果的だ。しかし電力を安定させれば収入が増えるような電力市場の改革なしにはビジネスは大きくは動かない。

 気象関連のサービスはデジタル革命が生かしやすい分野だが、デジタル革命の便益を生かせるような経済や社会へと仕組みを変革することも欠かせない。

 課題がわかれば解決も近い。そうなれば気になるのは日本の得意とするモノ作りへの影響だ。

 消費者は欲しいものを簡単に発信できる。求めているものがモノではなくモノが生み出すサービスであることが明確になるし、また無駄な生産がなくなるからコスト引き下げにもつながる。消費者にとってはうれしい話だ。

 他方、生産や流通側は多様な消費者の需要に迅速かつ廉価に対応できることが求められる。モノ作りにとって競争激化と脅威だが大きなチャンスにもなる。日本にはモノ作りの経験、気象など自然環境や人やモノの動きなど社会科学の情報の蓄積、情報を効率的に収集するセンサー技術、それに情報解析技術がある。デジタル革命は脱大量生産、顧客優位の時代とゲームチェンジの始まりであり、日本の成長戦略に欠かせない。

 消費者と産業がともにデジタル革命の便益を享受するには社会・経済システムなど周辺環境の整備も必要であり、そこは政府の出番だろう。

[日経産業新聞2017年9月7日付]

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