2017年11月18日(土)

春秋

2017/9/3 2:33
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 「動植綵絵(さいえ)」はさまざまな鳥や魚、植物を緻密な写生と大胆な色彩で描いた日本画だ。計30幅からなる。江戸時代の画家、伊藤若冲(じゃくちゅう)の代表作といわれる。昨年は、オリジナルな展示を踏まえ、釈迦(しゃか)三尊像の3幅とともに東京・上野で一堂に公開され、来場者を圧倒した。

▼その若冲を雑誌「日経サイエンス」10月号が特集している。生物学者の倉谷滋さんとライター、橋本麻里さんの対談にいろいろと教えられた。33幅はもともと、京都の名刹、相国寺に寄進され、大事な法要で部屋を囲むように並べられたようだ。「生きとし生けるもの全てに仏性がある」。そんな世界観を示すためらしい。

▼当時、日本に入ってきた博物学の影響も受けたという。それまでの花鳥画の伝統から離れ、森羅万象をもれなく記録するという発想もあったとか。目の前にある世界の多様さを尊び、その姿や共存のさまをありのまま受け入れる。知性と熱意なくして、なかなか難しい行いであることは、昨今の世界の出来事が証している。

▼人やモノの往来が積み重なり、歴史は織り上げられてきた。多様性を認めて、ともに生きるのは我々の宿命ともいえる。特定の人種を至上とみたり、ある宗教を非難したりする行いには代償が伴う。何度も学んだことだ。若冲は言った。「自分の絵をわかる人を千年待つ」。胸を張れる日は来るだろうか。「わかった」と。

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