懸念多い加工食品の産地表示 - 日本経済新聞
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懸念多い加工食品の産地表示

国内で製造されるすべての加工食品に、原材料の産地を表示する。そんな新しい制度が1日にできた。これまでは加工度の低い一部の食品に限られていた。消費者にとっては、商品を選ぶ際の情報が増える。

ただ表示のルールは、やや複雑だ。容器包装の見直しにはコストもかかる。消費者にとって本当に役立つ仕組みになるのか。不断の見直しが欠かせない。

新たに表示を求められるのは加工食品の原材料のうち、重量の割合が最も高いものだ。例えばポークソーセージなら「豚肉」について、「アメリカ、カナダ」などと使用量の多い順に産地を記す。

原材料の産地は多くの国にまたがり、時期によって変わることも多い。そのため、使う可能性のある国を「アメリカまたはカナダ」と並べたり、3カ国以上の場合に「輸入」と表記したりする方法も認められた。「輸入または国産」などの表示も起こりうる。その表示が何を意味するのか、ぱっと見て、わかりにくい面がある。

消費者庁から今回の基準について諮問を受けた消費者委員会でも、消費者が誤解をしないか、懸念の声が出た。複雑な仕組みは事業者の誤表示も招きやすくなる。制度の理解の状況について具体的な目標値を定めて周知に努めることや、監視体制の整備など、多くの注文がついた。

新しいルールは9月に制定されたが、2022年3月までは原材料の産地を表示しなくてよい移行期間になった。消費者庁や農林水産省などは対策を急いでほしい。

消費者委員会は、24年をめどに「拡大、廃止を含めて」制度を見直すことも求めた。それ以前でも、制度が十分活用されなかったり、コストが過度にかかったりする場合は見直していくべきだ。

原材料の産地表示を義務付けている国は国際的にみてまれだ。新ルールの背景には国産品のブランド力向上をはかる狙いがあるが、過剰な規制によって、かえって競争力をそぎかねない。

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