2018年7月19日(木)

臍帯血問題が突きつける課題

2017/8/30 2:33
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 へその緒や胎盤から得られる臍帯血(さいたいけつ)を違法に患者に投与したとして、医師や販売業者が逮捕された。厚生労働省と捜査当局は協力して実態を解明し再発防止策を徹底してほしい。

 2014年施行の「再生医療等安全性確保法」に基づく初の摘発となる。同法によると、他人の臍帯血を投与するような治療では専門の委員会で安全性や倫理面の審査を受け、厚労省に届け出をしなければならない。

 逮捕された医師らは届け出なしに高額の治療をしていた。同様の違法行為はほかにも多数あるとみられ、継続的な調べが必要だ。

 臍帯血には血液など様々な細胞のもとになる幹細胞が含まれる。白血病などへの効果が確かめられており、治療に使われている。臍帯血はiPS細胞の作製にも使われ、再生医療研究に欠かせない。

 一方で、今回問題となった美容や抗加齢、多くの進行がんの治療への利用は安全性や有効性が確認されていない。日本再生医療学会の澤芳樹理事長は「とても医療と呼べない」と憤る。再生医療の健全な発展を妨げかねない。

 厚労省は法律上の手続きをとった再生医療の提供医療機関をネットで公表してきた。逮捕された医師のクリニックも一部の治療は届け出ていたため、この中に含まれていた。厚労省は公表を停止したが、再開の際は患者に誤解を与えぬよう、内容に工夫がいる。

 患者も安易な宣伝文句にのらないよう、注意が必要だ。再生医療学会が近く開設を予定している相談窓口などを活用したい。

 白血病治療などに使う臍帯血は日本赤十字社などの公的バンクが産婦の善意によって集め、関係法に基づき管理している。しかし、今回使われたのは法規制が及ばない民間バンクの臍帯血で、経営破綻後にクリニックなどに渡った。

 保管状況もよくわからないまま治療に使われれば、健康被害が出かねない。臍帯血以外にも様々な細胞の民間バンクがあり、新たな規制も検討すべきだろう。

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