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オープンイノベーションで忘れがちな「縦の多様性」
伊佐山 元(WiL共同創業者兼最高経営責任者)

2017/8/29付
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 日本だけでなく、世界中でオープンイノベーションの取り組みが活発に行われている。大企業とベンチャー企業(VB)との交流会、新規事業のアイデアを出し合うコンテストの「アイデアソン」、社内ベンチャーなどだ。特に大企業によるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資は、米国や日本でもVB投資において大きな割合を占めるようになっている。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

 外部の様々な異なった意見を取り込んで、ビジネスに生かすというのがオープンイノベーションの趣旨だ。そしてオープンイノベーションで成果を出すには、多様性(ダイバーシティー)に関する2つの軸が欠かせない。

 一般的にオープンイノベーションの現場が意識するのは「横」の多様性だ。

 他業種のビジネスパーソンとつながろう、芸術家やスポーツ選手など異分野の人材との交流を増やそう、学際的に様々なジャンルを学んでみよう――。知と知の組み合わせから生まれるイノベーションにとって、自分の専門ではない領域の人との交流は有用だ。個人に置き換えてみても、変化の激しい社会に素早く適応するには、交友関係を広めたり、多趣味に生きたりするのは理にかなっている。

 一方で忘れがちなのが「縦」の多様性だ。

 自分より若い人、高齢な人、所得の低い人、高い人、持てる者、持たざる者、エスタブリッシュメント(政官財の主流派)、非エスタブリッシュメント――。横の多様性と比べると、縦の多様性を実践するのは意外と大変だ。

 世界的に社会の二極化が急速に進んでおり、縦の多様性を実践し、理解することはますます重要になっている。今後、政府の政策や大企業の新規事業、VBの製品やサービスを考えるときに、自分の身近な生活圏や人間関係の中だけで意思決定をしているようでは、成功するのは危ういと言える。人間には自分と似たようなステータス(社会的地位)や思想を持つ人と群れる傾向がある。それが一番楽で、ストレスを感じることが少ないからだ。

 特にSNS(交流サイト)を通じて得る情報に接する時間が増えるほど、自分とは異なる意見を聞く機会が減り、自分にとって不都合な情報や耳障りな出来事と接する時間も少なくなる。その結果、自分の思考の幅が狭くなりかねない。このことは昨今、世界が保護主義化し、内向きになっていることとも関連性があると考えている。

 我々の周りには様々な課題がある。世界各地で起きている紛争や経済格差の問題、VB業界における男尊女卑の問題、人工知能(AI)やすべてのモノがネットとつながるIoTの普及で実現する「第4次産業革命」とAIやビッグデータの活用で社会課題を解決する「ソサエティー5.0」のもとでの我々の働き方――。

 こうした課題への答えを見つけるため、我々は「縦と横の多様性」を理解する努力を重ねていかなければならない。地方でのボランティア活動や、学生へのメンタリング(助言)。タクシー運転手や会社の清掃員との何気ない対話。地元の新聞や図書館でしか得られない情報。いつもとは少し違う行動が縦と横の多様性の理解につながる。

 SNSが提供してくれる意心地の良い環境を離れて、普段接しない環境に身を置いてみる勇気を持つ。そんな小さな努力が我々を寛容で、強く、そして創造性あふれるイノベーション人材にしてくれるはずだ。

[日経産業新聞2017年8月29日付]


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