2018年7月22日(日)

仮想通貨の健全な発展へ目配りを

フィンテック
2017/8/27 2:30
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 紙幣や硬貨といった実物がなくインターネット上で不特定多数の人々で取引する仮想通貨に注目が集まっている。安い手数料で送金ができるなどの利便性がある一方で、通貨価値の急変動や投資トラブルなど問題もはらむ。金融の技術革新の芽を摘まずに、健全な発展を促すような目配りが必要だ。

 2009年に誕生したビットコインを筆頭に世界では600種類を超す仮想通貨がある。政府や中央銀行が管理せず、既存の金融機関を経由しないため送金手数料が安く、インターネットで手軽に取引できるのが特徴だ。

消費者保護に課題

 最近は値上がり益を期待した投資マネーの流入で取引が活発になっている。日本では14年にビットコイン取引所で巨額のコインが消失する事件が発覚し、仮想通貨の取引は一時下火になったが、海外ではその後も、新規参入や取引拡大が続いていた。

 ビットコインは今年初めまでは中国からの取引が多かったが、中国当局が規制を強めたため中国勢の取引は急減。代わって日本からの取引が急増し、全体の3割を超える水準まで膨らんだ。

 現段階では、ビットコインの購入の大半が値上がりなどを狙った投資目的で、実際に送金や決済手段として使うための購入はそれほど多くないとみられる。

 最近ではビットコインの取引量拡大で、システムの処理能力を高める手法について関係者間の意見がまとまらず、ビットコインが分裂し、新しい仮想通貨ができる騒ぎがあった。

 利用者からみれば、手持ちの仮想通貨が突然分裂し、急激に価値が変動するなど「通貨」としての使い勝手が良いとは言えない。

 民間主導で進む仮想通貨取引に当局も監視を強めている。主要7カ国(G7)は15年の首脳会議で、仮想通貨が資金洗浄(マネーロンダリング)などに悪用されることを防ぐための規制導入で合意した。日本もこれを受けて法改正に動き、今年4月に仮想通貨の取引所に登録を義務付ける改正資金決済法が施行になった。

 国内で運営する取引所は9月末までに金融庁に登録する必要がある。この法改正で日本でも取引所の監督を通じて消費者を保護する枠組みが一応整った。

 ただ、正式な取引業者以外にも、仮想通貨を「絶対値上がりする」などとして売り込む詐欺商法などのトラブルも増えている。こうした犯罪はしっかり取り締まるとともに、消費者も怪しい勧誘には注意することが必要だ。

 海外では企業などが資金調達のために独自の仮想通貨をネット上で不特定多数に販売する新規仮想通貨公開(ICO)という取引が拡大。米証券取引委員会(SEC)などが規制に動き始めた。海外でも、新しい取引の拡大に当局が試行錯誤しながら対応しているのが実情だ。

 ただ、リスクがあるからといって、規制でがんじがらめにすればよいというものではない。仮想通貨をはじめ金融とネットが融合した技術革新は新たな産業を生み出すとともに、うまく使えば企業の生産性向上にも役立つ。

 ビットコインは取引履歴を複数のコンピューターが記録するブロックチェーン(分散台帳)という仕組みで管理している。この仕組みは仮想通貨だけではなく、貿易金融、土地登記、製造業のサプライチェーン管理など金融以外にも様々な分野への応用が期待されている。

規制に必要なバランス

 仮想通貨は今後の普及しだいでは、中央銀行の金融政策にも影響を及ぼす可能性がある。

 世界の中央銀行の中には、法定通貨をネット上で取引できるようにするデジタル法定通貨の導入の検討も始まっている、スウェーデンや中国が実験に動き、国際決済銀行(BIS)でも調査・研究が進んでいる。日銀も欧州中央銀行(ECB)などとブロックチェーンの共同研究を進めている。

 新技術の黎明(れいめい)期には、世界中の起業家が群がり、あるものは失敗し、そのうち成功したものが生き残り、世界で普及する。インターネットの初期も同様だった。

 仮想通貨やブロックチェーンについても、日本が世界の技術革新の動きに乗り遅れないようにする必要がある。また新事業への若い起業家などの挑戦を妨げないようにすべきだ。規制・消費者保護と技術革新のバランスをうまくとり、新技術が健全な発展をとげ、経済活性化にもつながるよう目配りすることが重要だ。

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