2019年5月23日(木)
トップ > 特集 > 関西発 > ビジネス > 記事

関西発

フォローする

11月6日の電子版のリニューアルに伴い、特集「関西発」は「地域」セクションに移りました。「関西発」のコンテンツは「地域」セクションの「関西」でご覧頂けます。

灘の蔵元継承、日本酒に新風 初の女性や40代同窓生…
若者向けカップ酒やワイン風小ボトル

2017/8/26付
保存
共有
印刷
その他

女性や若年層が多い日本酒フェスで各社は飲み手の需要を探る(5日、神戸市)

女性や若年層が多い日本酒フェスで各社は飲み手の需要を探る(5日、神戸市)

日本屈指の酒所、兵庫県・灘の老舗酒造各社で40代や女性の新トップが経営に新風を吹き込んでいる。日本酒の国内消費が低迷するなか、各社に共通する課題が若者ら新規顧客の開拓だ。菊正宗酒造(神戸市)は飲みやすい小容量のカップ酒を増産し、大関(西宮市)は地域性に配慮した商品を増やす。開発やマーケティングに新しい発想を採り入れ、顧客の若返りを目指す。

8月上旬、神戸市で4万3千人を集めた日本酒と音楽の祭典「カンパイKOBE」。洋酒を思わせるカラフルな小瓶などを手に日本酒を楽しむ若者が目立った。日本酒ブースには菊正宗酒造、沢の鶴(神戸市)、大関など酒造各社が出展した。各社は消費拡大へ連携する一方、個別に若者を意識した施策を進める。

「従来はメーカーのこだわりでものづくりをしていた」

菊正宗酒造の嘉納治郎右衛門(じろえもん)社長(42)は6月26日、32年ぶりのトップ交代で経営を受け継いだ。

前社長の長男で、1997年に甲南大法学部を卒業、イトーヨーカ堂を経て2001年に菊正宗に入社した。「若い女性らが日本酒を求めるニーズが高まっている。今こそ復活のチャンスだ」と考えた父からバトンを渡された。

とはいえ、嘉納社長は「まだ日常の『家飲み』には至っていない。このままでは一過性のブームに終わってしまう」と指摘。ハレの席だけでなく普段から楽しめる商品の開発も強化する。

同社が重点を置くのが小容量(180ミリリットル)のカップ酒だ。容器は紙製で、上部にアルミ製の中蓋がついている。神戸市の工場で紙カップのラインを増設し、9月から生産能力を5割増やす。投資額は約3億円。

日本酒は瓶や大容量の紙パック入りが一般的だが、菊正宗ではカップ酒「樽酒ネオカップ」などの販売が好調だ。広口で飲みやすく、たる酒の香りと風味を楽しめる。

「若者がカジュアルに日本酒を楽しめれば飲み手の裾野は広がる」

33年ぶりのトップ交代で6月20日に就任した沢の鶴の西村隆社長(40)。菊正宗の嘉納社長の2歳下で同じ甲南大の後輩だ。

沢の鶴が力を入れるのは、新ブランド「shushu(シュシュ)」。ワインのような3色の小瓶はそのまま飲める180ミリリットルのミニサイズ。アルコール度数は低めに抑えた。月間2万本を販売する戦略商品だ。3月の発売時には東京・西麻布のナイトクラブで試飲イベントを展開した。今後も首都圏を中心にクラブやカフェレストランなど新しい販路を広げる。

「100人中、2人がおいしいと思う酒なら造る。大手と違う個性を大切にする」

創立500年超の中堅、剣菱酒造(神戸市)で7月12日に就任した白樫政孝社長(40)も独自性のある商品づくりに取り組む。

剣菱酒造の白樫社長と沢の鶴の西村社長は幼稚園から甲南大経営学部まで同級生だった幼なじみだ。

剣菱酒造は営業や広告の担当者を置かず、昔ながらの酒造りの伝承に注力する。12月には約5億円をかけ、酒造に必要な木製のおけやたるの製造拠点を新設する。高い専門技術を持つ職人が激減しているのに対応し、自社で職人育成に取り組む。

「ヘビーユーザーが高齢化し、もはやそこだけには頼れない。特定の飲み手にささる商品設計を進める」

大関で初の女性トップに就いた長部(おさべ)訓子社長(60)はターゲット層を明確にした開発を強化する。

長部社長は「ワンカップ大関」を開発した長部二郎元副社長の長女だ。目指すのは売上高の4割を占める「ワンカップ大関」のテコ入れだ。主な飲み手は60代以上の男性と高齢化した。昨年末からは大阪市や東京都のイベントで、漫画家の安野モヨコ氏らの絵をあしらった限定ラベルの商品を発売した。

濃い味の食事が多い名古屋では甘口にするなど、甘口や辛口など風味を変えた地域限定商品を発売した。9月には兵庫県や香川県など瀬戸内海に面した7県で魚介類に合わせた「瀬戸内仕立て」を発売する予定だ。

■国内消費 ピークの3分の1 20代の開拓不可欠
 国税庁によると、日本酒の国内消費量は1970年代の167万5千キロリットルをピークに2015年は3分の1の55万6千キロリットルに減った。蔵元数は1627カ所と半減した。
 市場が低迷する一方、地方の酒蔵が存在感を高めている。神戸市で昨年開かれた世界最大級のワイン品評会の日本酒部門審査会では、茨城県や秋田県の酒蔵が上位に顔を出した。市場は群雄割拠だ。
 酒類業界では大阪発祥のサントリーがウイスキーやビールのファン拡大に貢献した。灘の酒造各社は長年蓄積したマーケティング力を生かし、サントリーのように若手や女性をひき付けられるかがポイントになる。
 成長の余地はある。日本酒造組合中央会(東京・港)が5月にまとめた調査によると、20代はビール以外の酒類を飲む量が各世代別で最も多い。「若者が新しく日本酒に親しむことで市場が成長できれば」と同会は期待する。
(神戸支社 杉浦恵里)

関西発をMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ

電子版トップ特集トップ


日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報