2018年12月11日(火)

大学をどう変える(下) 強みを伸ばし自ら将来像描こう

2017/8/21 2:30
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日本の大学は国際化やIT(情報技術)時代を担う人材の教育で後れを取り、世界をリードしてきた科学研究でも陰りが見え始めている。この状況を変えるには何が必要なのか。

大学が自ら強みを見つけ、それを伸ばす将来像を描くことが欠かせない。国頼みの姿勢や横並び体質から脱する必要もある。特色ある戦略を打ち出すため、ガバナンス(統治)改革が第一歩になる。

横並びから脱する

理工系大学では日本を代表する東京工業大。2012年に就任した三島良直学長が「第2の建学」とも呼べる改革を進めている。昨春には学部と大学院の区分けを廃し「学院」に一本化した。専攻を超えた研究チームもつくり、新分野に果敢に挑んでいる。

成果も表れてきた。英科学誌が今春公表した日本の大学・研究機関ランキングでは、東工大は国内6位ながらも論文の増加率でトップクラスだった。大隅良典栄誉教授がノーベル賞を受賞し、入学志願者も増加。三島学長は「30年には世界の研究大学の10指に名を連ねる」と高い目標を掲げる。

大阪大は医薬関連企業が多い地元の利を生かし、産学連携を強めている。免疫学の研究所では中外製薬から10年間で総額100億円の資金を受けて共同研究を始め、海外での知名度も増してきた。

ただ、700校以上ある国公私立大のうち、改革に積極的に取り組んでいるのはまだ少数だ。

有力教育誌や専門機関が発表する世界の大学ランキングによれば、日本から上位100校に入るのは東大、京大など数校だけ。中国やシンガポールの大学が急伸しているのに比べ、日本の大学は外国人教員や留学生が少ないなど国際化の遅れが目立つ。

教育で進む技術革新にも乗り遅れている。米国の主要大は「ムーク」と呼ばれるオンライン講義を活用し、世界で3千万人以上に授業を配信している。だが日本で活用している大学はごく一部。将来の人工知能(AI)社会を担う人材の育成にも懸念が広がる。

安倍政権は13年の成長戦略に「今後10年以内に世界の大学ランキング上位100校に日本から10校以上を入れる」と盛り、文部科学省は国際化の重点校を選んだ。だが官の支援頼みでは実効性に疑問が残る。大学が自ら将来像を描き実践していく必要がある。

ここ数年、受験生や企業の評価が高いのが国際教養大(秋田県)や立命館アジア太平洋大(大分県)など、世界に通じる人材育成をめざす大学だ。授業を英語で行うなど、小規模大学の利点を生かして独自色を打ち出してきた。

地方大でも地元の強みに注目する大学が出始めている。

静岡大は2年前、アジアから毎年約80人の留学生を招く「アジアブリッジ計画」を始めた。地元にはスズキヤマハなど海外展開する企業が多く、これらの企業が学生の研修などで協力する。

今秋修了する大学院1期生のなかには、地元企業に就職が内定した留学生もいる。鈴木滋彦副学長は「日本で学びたい留学生と、現地法人の幹部候補生を育てたい企業の希望をともに満たし、大学にとっても活路となる」と話す。

教育と経営の分離を

茨城大も今春、地域貢献をめざして人文社会科学部を新設した。学生に複数の専攻を持たせ、視野の広い人材を育てる。文科省は少子化に対応して人文系学部の縮小を求めているが、先手を打って大学自身が改革に乗り出した。

これらの大学に共通するのは、学長や副学長が強いリーダーシップを発揮していることだ。

日本の大学では教授会の権限が強く、学部間の利害調整や迅速な意思決定を阻んできた。この反省から2年前に学校教育法などが改正され、「教授会は意見を述べるが、最終決定は学長が下す」と統治の改革へ踏み出した。

だが改革はまだ不十分だ。欧米では学長とは別に、戦略づくりや財務を専門に担当する副学長格のポストを設け、民間を含め学外から人材を招く大学が多い。経営と教育・研究とで、役割分担と責任を明確にするためだ。

もう一段の統治改革に向け、制度を設計するのは文科省の役割だろう。ただし、個々の大学の戦略づくりに国が口をはさむのではなく、大学の自主性を最大限引き出せるような改革にすべきだ。

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