Eの新話(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

技術だけではない 福島第1核燃料取り出しの課題
編集委員 安藤淳

2017/8/17付
共有
保存
印刷
その他

 政府と東京電力は9月中に、福島第1原子力発電所の原子炉ごとに溶融燃料(デブリ)の取り出し法を決める。2021年には取り出しに着手し、廃炉作業は新段階に入るが技術的な課題は多い。地元にはなお不信感もあり透明性の確保と丁寧な説明が欠かせない。

福島第一廃炉国際フォーラムでは議論内容のイラストに参加者が感想シールを貼り付けたが「不安」「不満」なども目立った
画像の拡大

福島第一廃炉国際フォーラムでは議論内容のイラストに参加者が感想シールを貼り付けたが「不安」「不満」なども目立った

 「原子炉内のロボット調査で貴重な情報が得られた」。8月3日、国際廃炉研究開発機構(IRID)が福島県いわき市で開いたシンポジウムで経済産業省の星野岳穂原子力事故災害対処審議官は胸を張った。今後の技術開発の加速にも期待を示したが、参加した技術者の1人は「政治的にスケジュールを決められても技術が追いつくだろうか」と首をかしげる。

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構が7月末に示した新しい技術戦略プランの概要によると、デブリ取り出しの際に原子炉格納容器を水で満たす「冠水工法」は使わない。低水位での「気中工法」で、横からレールやその上を動くロボットを入れて取り出す「横アクセス工法」を検討する。

 冠水工法は安全性が高いが、事故による損傷を補修し水漏れを防ぐのは難しい。気中工法は放射線の遮蔽や汚染物質の拡散を防ぐために、より一層の工夫がいる。

 シンポジウムでは取り出し作業のアニメーションも示し、1号機で「筋肉ロボット」が炉内の余計な機器や障害物をてきぱきと片付ける様子などが映った。IRIDの奥住直明開発計画部長は「簡単そうに見えるが、放射線量が高いなかで実施するのは大変だ」と認める。あらゆる選択肢を検討して備えることに意味があるという。

 原賠機構が新しい戦略プランを公表した際、福島第1の近隣自治体関係者らから技術内容の細かい質問はなかった。それまでも説明を繰り返しており、冠水工法が難しいという共通認識ができていたためとみられる。

 むしろ「汚染水問題への関心が高かった」と原賠機構の山名元理事長は振り返る。汚染水からは専用装置で放射性物質を除去しているがトリチウム(三重水素)が残り、海に捨てられず保管している。タンクの総数は1000基に近づきつつあり、やがて行き詰まる。

 就任まもない東電の川村隆会長が少し前に、トリチウムの海洋放出を決めたと受け取れる発言をしていた。国の基準では濃度が1リットルあたり6万ベクレル以下なら海洋放出を認めている。希釈して流すのは技術的に可能で、政府関係者や専門家の多くはいずれ放出が必要になると考えている。

 しかし、風評被害を恐れる漁業関係者らは川村会長の発言を唐突と受け止め反発した。吉野正芳復興相も海洋放出に反対を表明、東電や政府への不信感ばかりが残った。トリチウムの性質や、国の基準内で海に出している例はほかにもあることなどを事前に丁寧に説明していれば混乱は防げたかもしれない。

 原賠機構やIRIDも情報発信の改善に取り組んではいる。7月初めに原賠機構が福島県内で開いた「福島第一廃炉国際フォーラム」では立命館大学の開沼博准教授が事前に地元の人々の関心事を聞き取ってテーマなどを検討。会場から質問も受け「双方向」のやりとりを工夫した。

 ほぼ一方的な説明や説得に終始し、参加者から「なぜもっと質問を受けないのか」と声があがった昨年に比べると大きな改善だ。山名理事長は「信頼関係がなければ意図が伝わらないと気付かされた」と話す。

 ただ、フォーラム終了後、テーマをイラスト風に描いた紙に参加者が感想のシールを貼る試みでは、「わからない」「不安」「不満」のシールも目立った。信頼を得ながら廃炉を進める歩みは始まったばかりだ。

[日経産業新聞2017年8月17日付]


「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

Eの新話(日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

【PR】

Eの新話(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

拡大するESG投資 開示の仕方、評価に影響

 夏をピークに、企業のアニュアルリポートや環境・CSR報告書の2017年度版が続々と発行されている。ここ数年で企業の情報開示は大きく変わってきた。特徴は大きく2つある。
 1つは、売上高や利益といった財…続き (9/25)

ダウ・デュポンが出資比率を引き上げるサウジアラビアの石化複合施設=ロイター

ロイター

サウジ合弁買い増すダウ 米と中東の2極体制へ備え

 米ダウ・ケミカルと米デュポンが8月31日に統合手続きを終え、世界最大の総合化学メーカー、ダウ・デュポンが発足した。ダウ・ケミカルはその直前、サウジアラビアでの巨大合弁事業について、出資比率の引き上げ…続き (9/18)

環境分野でデジタル革命 周辺整備が不可欠

 人工知能(AI)、ビッグデータなど呼び名は様々だが、情報の蓄積、データの高速処理、インターネット、それにセンサー技術を統合的に活用するデジタル技術のポテンシャルの大きさは誰もが認めるところだ。
 同分…続き (9/11)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

09月25日(月)

  • IoTの決め手は職業研修と教育にあり ドイツがIoT導入を政府によるトップダウンで行う理由(第2回)
  • Lastpassから1Passwordへ乗り換える方法
  • 自動運転時代到来で、自動車市場は急拡大する 名古屋大学COI未来社会創造機構客員准教授の野辺継男氏に聞く

日経産業新聞 ピックアップ2017年9月25日付

2017年9月25日付

・火災、IoTで遠隔通知、岩崎通信機など
・「勝ちには力、負けには夢」 ロボコンの父、森東工大名誉教授に聞く
・心筋細胞で動く微小装置 阪大、拍動に合わせ屈曲
・クラボウ、高速で欠陥品判別 飲料ペットボトルの画像診断装置開発
・テルモ、米国でカテーテルの開発体制整備 拠点統合や研修施設
…続き

[PR]

関連媒体サイト