2017年11月22日(水)

日本でイノベーション生むイントレプレナー育成
西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

コラム(ビジネス)
2017/8/18 6:30
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 2015年4月の安倍晋三首相のシリコンバレー訪問以降、日本におけるイノベーション推進やベンチャー企業支援が活発になっている。日本における起業も増えたし、リスクマネーの源泉であるベンチャーキャピタル(VC)も量と質の両面で水準が上がっている。新しい価値・事業の創造に適した環境は急速に整いつつある。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

 そうしたときだからこそ「日本におけるイノベーションのキーはイントレプレナー(企業内起業家)によるエコシステムの構築ではないか」とあえて提起したい。

 今の日本で行われている各種施策や実行されているモデルは、そのほとんどがシリコンバレーからの輸入品であり「日本をシリコンバレーにする」ためのものであるように感じる。それ自体は素晴らしい取り組みだが、日本の経済の生態系(エコシステム)がシリコンバレー並みになるにはどれくらいの時間と忍耐(特に失敗に対しての)が必要なのだろうか。

 島国である日本はユニークな側面をたくさん持っている。居住者の大半が日本人であり、しかも、そのほとんどが日本語という世界的に見れば非常にマイナーである言語だけを使っている。商慣習や文化も保守的である。

 一方、シリコンバレーでは、多種多様な人たちが英語というグローバルな言語を使い、商慣習や文化は新しい価値を生み出すという方向に極度にバイアスされている。基本的要素が日本とは違うのに、シリコンバレーのシステムだけを導入して稼働し続けられるのだろうか。

 日本にも優れたアントレプレナー(起業家)が存在するが、まだ少数だし継続的に起業家を生み出す仕組み(教育・環境・社会への浸透)は未熟である。起業は大きな賭けでもある。成功事例を生み出すには起業家の層を厚くする必要があるが、それには時間がかかる。

 一方、成熟した企業に目を向けると、社内で新しい価値や事業を起こしたいと考えているイントレプレナー予備軍は多く存在している。しかも、その人材のプールは起業家のプールよりも大きい。昨今のイノベーションブームは成熟企業にも波及しており、彼らを活躍させるための仕組みもいくつか編み出されている。(1)企業内に独立した新事業開発部門を設立する(2)VCと協力してスピンオフやカーブアウトの事業開発モデルを構築する(3)ジョイントベンチャー(JV)の設立――といったものだ。

 当社でも、独立した新事業開発部門を設立したり、IoT(すべてのモノがネットにつながる)事業をスピンオフモデルを活用して開発したりしようとしている。これらはもちろん事業開発が主目的であるが、私はその副産物としての人の育成が中長期的にはかなり大きいと考えている。当社のMOTOBOTプロジェクト(ヒト型ロボットで二輪車を走行させる試み)においても、担当のエンジニアたちは今までに経験したことがない重圧と喜びを経験し、多様で個性的な人たちと一緒に働くことを通じて大きく成長した。

 新しい価値を生み出すことの素晴らしさ、苦しさ、それを乗り越えたときの達成感、乗り越えられなかったときの挫折感。それらを体験した人たちが大きな組織に戻り、大きな価値を生み出す新事業開発を行う。そうした人材がコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)やオープンイノベーションなどを担当することで、日本らしいイノベーションエコシステムが生まれるのではないかと考えている。

[日経産業新聞2017年8月15日付]

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