2019年3月22日(金)

戦略に説得力もたらすリスクと対策の提示
レランサ社長 スティーブン・ブライスタイン氏

2017/8/15 6:30
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トップレベルの役員やマネジャーであれば、戦略を立ててそれをプレゼンテーションする機会を与えられることがあるはずです。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

彼らの多くは、自分のつくった戦略が正しいことを証明するために膨大な量の資料を用意します。しかし、真に説得力のあるマネジャーであれば、逆に「なぜ自分の戦略が間違っている可能性があるか」という理由を並べるはずです。

戦略のすべては大きな仮定事項に基づいています。でも未来のことをすべて確実にわかる人などいませんから、その仮定も間違っている可能性があるわけです。できるマネジャーは自分の戦略にあるリスクを認識し、そのリスクにどう対応するかというところまで戦略に入れています。

例えば、自分たちの市場には主に3つの競合相手しか存在しないという仮定に基づいて戦略を立てたとしましょう。そのときに自分の仮定に対し「もしこんなことが起きたら……」という疑問を投げかけることがリスクを認識することにつながります。

日本の保険会社が自分たちの戦略を立てている場合であれば、有名でしかもその動向を比較的予想しやすい競合会社の存在が仮定の一部になっているかもしれません。

でも米国の大手IT(情報技術)企業、例えばグーグルが日本法人を通じて豊富な所有データと財政力を武器に保険商品を売り出すことも有り得るとは思いませんか。そのようなことがもし起これば、日本の大手保険会社の戦略に与える影響は計り知れません。

リスクを特定したら、それに対する4つの対応策が考えられます。

1、リスクが実現する可能性を抑えるための予防処置をとる。

2、リスクが実現してしまった時のための準備を行う。

3、予防処置と、不測事態発生のための準備の両方を行う。

4、何もせず、リスクとそれがもたらすかもしれない結果に甘んじる。

保険会社であれば、競合相手からの脅威を最小限に食い止めるための4つの予防対策をすることが可能です。

(1)イノベーションと、新しい保険商品の販売を可能にするためにインフラをアップグレードする(2)顧客が自分で保険をカスタマイズして購入できるような、オンラインプラットフォームを開発する(3)ソーシャルメディアやニュースといった、まとまりのない最新データを、保険に使える機能を開発する。(4)将来競合相手となる可能性がある企業(例えばグーグル)と提携する――。

予定がうまくいかない可能性やうまくいかなかったときの対処法について真剣に話し合うと、自信や信頼が生まれます。あなたの上司が有能であれば、不慮の事態が発生したときにも戦略を遂行するためのプロセスをあなたがじっくり考えていることについて、感謝の念を抱くはずです。

不慮の事態について話すときには以下の4つの点が重要になります。

まず、簡潔に戦略とその論拠を述べましょう。ビジネスをしっかり把握していれば、どんな戦略でも2ないし3つの文で説明できます。

次に戦略を立てたときの仮定事項をあげます。おおむね3~5つで十分でしょう。そしてそれぞれの仮定事項を立証する方法を説明します。

最後にそれぞれの仮定事項を今度はリスクとしてとらえて説明します。それぞれのリスクに対する対応策を述べ、その論理も説明してください。

最も説得力のあるマネジャーは、自分を正当化するだけでなく、間違っていたときのための納得のいくプランを説明します。そうすることで戦略をより説得力の強いものにし、戦略マネジャーとしての手腕も飛び抜けていることを周りに認めてもらうことができるはずです。

[日経産業新聞2017年8月10日付]

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