脅威を見据えた安保論議を
日本が直面する安全保障環境はここ数年で激変している。政府が8日に公表した防衛白書は、北朝鮮の核・ミサイル開発と中国の海洋進出への強い懸念を示した。わが国の安全を守るために必要な対応は何なのか。現実の脅威を見据えた安保政策の議論を加速していかねばならない。
2017年版防衛白書は、北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの運用能力の向上を「新たな段階の脅威」と位置づけた。過去5回の核実験を通じて「核兵器計画が相当に進んでいる。小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が考えられる」と指摘した。
いずれも昨年より厳しい表現だ。特に固体燃料を使用した新型弾道ミサイルの配備、最大射程が5500キロメートルを超える大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実用化の動きを重大視している。
中国に関しては尖閣諸島周辺での恒常的な活動、南シナ海の軍事拠点化などに焦点を当てた。10年間で3倍になった国防費のもとで「わが国を含む地域・国際社会の安全保障環境に与える影響について強く懸念される」と記述した。
安保政策はもはや一部の政治家と専門家が議論すればいいというテーマではない。北朝鮮や中国の脅威を踏まえ、防衛費の増減や新たな装備品の導入について議論を深めていく必要がある。
そういう状況で起きた南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽問題は、国民への説明責任という観点で重大な要素をはらんでいる。真相の解明と再発防止策を急がねばならない。
安倍晋三首相は3日の内閣改造に合わせて、防衛大綱の見直しを指示した。小野寺五典防衛相は敵基地攻撃能力の保有に関して「総合的にどのような対応が必要か検討したい」と踏み込んだ。
日本の守りに万全を期すのは当然だ。一方で予算には限りがあり、力で対抗すれば緊張を高める懸念もある。日米同盟を強化しながら、国際社会と連携して地域の安定を守る努力が求められる。