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自動記事執筆だけじゃない 報道機関にもAIの波

藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

人工知能(AI)が、囲碁や将棋で高段位者に勝つという話題が当たり前の時代に入った。ビジネスのさまざまな局面に、AIが関与しているといっても奇異に感じる読者はもはや少ないだろう。メディア産業においても、同様の影響が生じている。

「完全自動決算サマリー」も試験的に始まった(写真は紹介ページ)

7月12日付の日本経済新聞は、香港の有力紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」の最高経営責任者(CEO)の、「人工知能(AI)は読者がニュースを見つける方法と、自動記事作成の2つの面で報道機関に大きな影響を与えるだろう」との発言を報じた。

「ニュースを見つける方法」とは、読者がニュースと出会う機会と同義だ。かつてはメディアがつくり出す紙面や番組でニュースを、読者自らが見つけだしていた。メディアとしての信頼感や読者の習慣からくるものだったが、いまは交流サイト(SNS)やニュースアプリが、話題のニュースを見つけてくれる。

今年はじめ、英国のロイター研究所らが36カ国・7万人のニュース読者を対象にして行った調査によると、35歳以下の若者の7割は、もはやニュースサイトを訪れず、フェイスブックなどのAIが関与する仕組みを通じてニュースと出合っているという。

どのニュースを読むべきかという発見のメカニズムは、筆者が携わるニュースアプリ「スマートニュース」でも、機械学習というAI技術を用いて運営されている。書かれた言語やニュースの主題を判定し、話題性などから、取捨選択を行い、適切な場所に割り付けて表示するのだ。

米アマゾン・ドット・コムが成功させて以降に参入が続いている、AIによる音声認識機能を備えたスピーカーも、メディアを変化させている。音声で尋ねれば天気や最新ニュースを読み上げる仕組みが広がり、アメリカではすでに3000近くのメディアがこれに対応した。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身。

先に紹介した発言には、「自動記事執筆」についても言及があった。企業業績の開示やスポーツ競技のニュース報道の分野で、データを基にした記事の自動執筆の試みが現実となろうとしている。国内では、日経新聞が「完全自動決算サマリー」で企業業績関連のニュースの自動化を発表したし、NTTデータは、気象データから気象ニュースを生成する実験に成功したとする。

「ニュースのタネ」を発見するのも、AIの得意分野になるだろう。火事や災害、交通機関のトラブルなどSNS上の投稿を解析して、ニュース記事を自動的に執筆する仕組みを、NHKやベンチャーのSpecteeらが発表している。

また、昨今では世界で「デマニュース」の問題が取りざたされているが、重要人物や政治家の発言に関しては、その真偽確認(ファクトチェック)が欠かせなくなっている。先ごろ行われた世界のファクトチェック団体が集まる年次総会では、政治家の発言について、リアルタイムに真偽を表示する仕組みが紹介された。

今後は、AIが政局を揺るがすような重要な役割を果たす可能性も否定できない。

[日経MJ2017年8月7日付]

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