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G20の温暖化対策 米と溝も足取り止めず
日本総合研究所理事 足達英一郎

2017/8/7 6:30
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 7月7~8日にドイツのハンブルクで20カ国・地域(G20)首脳会議が開催された。新聞でも報道されたように、地球温暖化を巡る討議では、2020年以降の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した米国と、その他の国々との溝が鮮明になった。

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 首脳宣言では、「我々は、パリ協定から脱退するとの米国の決定に留意する」という一文で始まる段落を置きつつ、「その他のG20構成国の首脳は、パリ協定が不可逆的である旨表明する」という段落がそれに続いている。これだけを見ると、確かに世界の温暖化対策は、足踏み状態に逆戻りしたかのような印象を受ける。

 しかし、「気候変動及びエネルギー行動計画」と題された付属文書を見落とすべきではない。序文のただし書きにおいて米国の立場に関する言及が記述されているが、それは「米国は現在、地球温暖化に関連した政策を見直している途上にあり、この文書とその内容に関する立場を留保し続ける」と書かれている。内容に反対の立場を表明しているわけでなく、後追いで、いつでも合意に加われる配慮がなされている。

 しかも、G20が財務大臣・中央銀行総裁会議を起源とし、いまでも正式名称が「金融・世界経済に関する首脳会合」であることからも分かるように、温暖化対策を後押しする金融活動の記述が、行動計画の随所に盛り込まれた内容となっている点は興味深い。

 いくつかの注目点を概観すれば、第一のポイントは温暖化に対する強靱(きょうじん)性と適応努力の強化という項目で、新組織の設立が決議されたことだ。「温暖化と災害リスクを織り込んだ金融と保険による解決のためのグローバルパートナーシップ」と名付けられたこの組織には、各国政府、国際機関のほか、必要に応じて市民団体や民間金融機関も参加。温暖化の緩和ばかりではなく、温暖化への適応を先導することになった。

 第二は、G20環境金融研究グループが取りまとめた金融セクターにおける環境リスク分析の総合報告書の完成が報告されたことだ。G20と金融安定理事会(FSB)は、これまで一貫して温暖化が将来、金融システムの不安定要因になる懸念を共有してきた。

 今回公表された26ページからなる総合報告書では、金融機関が取り組む環境リスクアセスメントのあり方、既存事例、金融行動の判断に欠かせない一般公開される環境関連情報のあり方、今後の課題などを詳述している。また後半は、この一年間の世界の環境金融の具体的な進捗事例を網羅する内容となっている。

 第三は、本欄でも取り上げたFSBが設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終提言書の完成が報告されたことだ。

 パブコメでは「気候関連リスクの財務影響の計測はこれまで一般的には対応されておらず、拙速なリスク計測・開示を行えば、かえってミスリーディングな結果となる。この場合、特定の業界・資産の価値が大幅に毀損する『座礁資産』化が過剰に進み、かえって金融システムの健全性を害する懸念がある」といった慎重な対応を求める声も上がった。しかし結局、一般企業向けと投資家、銀行、保険会社向けそれぞれに望まれる気候関連財務情報の開示方法が提言される形となった。

 これを受けて、ANZ、バークレイズなど世界の11の銀行は提言に即した情報開示の共同開発プロジェクトを発足させることを既に表明している。英国の中央銀行であるイングランド銀行が、銀行業界に対して気候変動リスクについての調査(internal review)を行うとの報道もある。

 19年のG20サミットは日本で開催されることが決まった。世界の温暖化対策は、決してその足取りを止めているわけではない。この間、日本がどのような貢献を示せたのか。世界の目は集まることになる。

[日経産業新聞2017年8月3日付]


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