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経済構造が大転換、シリコンバレーの意味を問い直す
野口 功一(PwCコンサルティング パートナー)

2017/8/4 6:30
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 「人工知能(AI)」「ロボティックス」「ブロックチェーン」「オープンイノベーション」「シェアリングエコノミー」「デザインシンキング」。これらのキーワードを見ない日はない。社会の資本主義的な構造は変わらないのかもしれないが、トレンドとなる言葉はその構造の上辺を滑るように流れ去っていく。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

 だが、ここ数年の流れはそれまでとは少し違うような気がしてきている。上辺を滑る言葉はこれからも移り変わると思われるが、その下にある経済やビジネスの構造が大きく変わってきているように感じるのだ。

 例をあげると、従来の取引形態はモノやサービスを売る人と買う人によって成り立ってきた。売り手は必ずモノを仕入れ、自分の時間を顧客のために使ってビジネスを行ってきた。買い手は自分が必要とするモノやサービスの対価を払うことにより欲しいものを手に入れ、時間を短縮してきた。

 こうした経済の基本中の基本の構造が少しずつ変わりつつある。流行のキーワードのひとつである「シェアリングエコノミー」は、それまでの「モノの所有=よいこと」という概念を覆している。その代わりに共有という形でビジネスが成り立つことを証明した。

 モノやサービスを仕入れるために手間や時間をかけるのではなく「空いているモノや時間」をビジネスに使っている。「無駄」を活用しているとも言い換えられる。買い手も所有するのではなく、必要なときに必要なだけ共有する。こうすることで費用も安くすみ、保管場所などの無駄も減らせる。

 このような感覚は従来の経済行動規範からの大きな変化ではないだろうか。古代の物々交換から始まった所有物による価値交換から、共有になり、しかも経済行為としてお金の流れも新しくできてくるのである。

 オープンイノベーションも従来の経済行動とは違ったものである。

 それまでの商品開発では、他社との違いを打ち出すために、自社の強みを徹底的に磨いて弱みを見せないという、非常に閉鎖的な考え方に基づいていた。オープンイノベーションでは、自社の技術のみでは競争に勝てないと認識し、他社と協力して自社の弱みを補強して強みを伸ばすという、まったく反対の考え方に立っている。いわば弱みをさらけ出し「自分たちだけでは不十分です」と宣言するわけである。

 これまでにも「レンタル」や「提携」など、似たような概念はあった。だが、レンタルはレンタルするものを仕入れなければならない。提携は相手が最初から絞られ、閉鎖的な環境で進められてきた。現在は共有や協業などの考えのもとに新たな経済環境ができつつある。

 顧客との関係も変わるかもしれない。これまでは「売り手」はいかに安いコストで高く売ることを、「買い手」はいかに安い値段で高い満足を得ることを考えていた。両者はけん制しあう関係にあったとも言える。だが、今後は売り手と買い手がともに利益を得ることをもくろむ経済行為が増えるかもしれない。

 これらの構造の変化の発信地としてシリコンバレーが君臨してきた。独自の経済の生態系(エコシステム)を持ち、多くのベンチャー企業や起業家を輩出し、世界に影響を与えてきた。経済構造が変わる分岐点を迎えている今の時代にこそ、シリコンバレーの本質的な意味を改めて考える必要があるのではないだろうか。

[日経産業新聞2017年8月1日付]


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