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アート鑑賞、オンデマンドが当たり前の時代に

スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜

「何か青いものを送って」「夏っぽいものを送って」。サンフランシスコ現代美術館にこんなテキストメッセージを送ると、マッチする作品のコンテンツがインターネットを通じて送られてくる。3万5000点あまりの所蔵品の中からリクエストに合う作品をランダムに送り返してくれるサービスだ。

同館によると、所蔵する美術品のうち、実際に館内に展示されているのは全体の約5%。サービスは残りの95%を活用する新しい試みだ。

また先日、Artsy(アーツィー)というニューヨーク発のアートマーケットプレイスが5000万ドルを調達した。世界90カ国の1800を超えるギャラリーの作品にネットでアクセスできる。このサイトは月に2000万ドルの売り上げがあるという。

2つの事例が象徴するのは、テクノロジーによってアート業界にも変化が起こっているということだ。美術館に見に行かずとも「オンデマンドアート」が可能になり、そして手頃な価格で楽しめるようになっている。

非常にわかりやすい例が、ディスプレーの高画質化、薄型化によって可能になったデジタルアートフレームだ。Meural(ミューラル)は、さながら「額縁IoT」とも呼べる商品だ。フレームに好きなアートを表示できる。スマートフォンのアプリを活用し、常時3万点以上の作品にアクセスでき、ピカソやゴッホなどの有名アーティストの作品も見放題だ。

類似の商品にDepict(ディピクト)というデジタルアートフレームもある。今年9月の出荷を予定しており、4KウルトラHDという画質を誇る。絵画のタッチの繊細な部分の表現も期待できるのではないだろうか。無料で表示できる作品のほか、毎月20ドルを支払うことで新作にアクセスできたり、プレミアムアートコレクションが週次で更新されたりする。花瓶に花を生けるように、毎週部屋のアートを変えることができたら、日々の暮らしも豊かになりそうだ。

ディスプレーだけではない。現代アーティストの作品のコピーを制作、ネット販売するTWYLA(トゥワイラ)というサービスもある。作品の価格帯は10万~50万円。アートのコピーというと少々いかがわしい響きだが、コピー数は30~90部に限定されている。

トゥワイラでは有名美術館にも展示されているようなアーティストと直接契約を結び、取り扱っている作品は全て独占販売という。利用者は高額のオリジナルを購入するのではなく、アーティストのお墨付きの限定コピー作品を購入できるのだ。30日間は返品無料で、自宅への設置もトゥワイラが手伝ってくれるので初心者にも安心だ。

さらに手軽にアートにふれることができるサービスがMinted(ミンテッド)だ。世界60カ国の1万人を超えるインディーズアーティストから作品を購入でき、場合によっては作品内容をリクエストすることもできる。飼い犬や愛車をアートに仕上げてもらうこともできる。私のようなアート初心者向けには、アートスタイリングサービスも用意されている。簡単なアンケートにこたえると、専門のキュレーターが私のためにアートを選んでくれる仕組みだ。

私自身、アートにはほぼ縁がない暮らしを送ってきたが、手軽にアートを生活に取り入れることができるなら、ひとつトライしてみようという気になった。私たちのアートへのハードルが下がるだけでなく、アーティストが日の目を見る機会も増えるだろう。

今後は絵画や写真だけでなく、彫刻なども対象にしたサービスが増えるかもしれない。サルヴァドール・ダリの美術館、米スミソニアン博物館は仮想現実(VR)のヘッドセットを使って鑑賞できる。飛行機に乗らずに訪れることができるミュージアム。テクノロジーの発展によって、アートがどんどん身近になっている。

[日経MJ2017年7月28日付]

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