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春秋

数年前の慶応大学法学部の入試で、国家権力の行使に対抗する手段としての市民の「抵抗権」を題材にした小論文が出題された。国を相手取った訴訟や政権批判の投票など合法的な抵抗権と、法に触れる可能性のある抵抗権を区別し、後者について受験生に考えさせた。

▼具体例を交え論じよ、という。参照されるテキストは元上智大学教授の故ホセ・ヨンパルトさんの「法哲学で学んだこと」(成文堂)。欧州では、近代市民革命という抵抗権により人々は民主制を手にした。だが、現代日本のような法治国家で、法に触れる抵抗は許されるのか。また、どのような意味を持つのか。難問だ。

▼例に浮かぶのは、沖縄県の米軍基地問題だ。おととい県は国を相手取り、普天間基地の名護市辺野古への移設工事の差し止め訴訟を起こした。これは合法的抵抗だ。一方、基地建設に抗議する男性が器物損壊容疑などで逮捕・起訴され約5カ月間身柄を拘束された事例は、法に触れる抵抗だろう。そこから何を酌むべきか。

▼答案を考えたが、まとまらなかった。基地問題で、橋本政権時代に沖縄県との仲介役を務めた故下河辺淳・元国土事務次官が残した文書がこのほど県公文書館で公開された。抵抗の背後にある歴史を理解すべきだ、と説いたメモが残る。対立を和らげるヒントはないか。この夏、文書を閲覧し再び入試問題を解いてみたい。

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