2019年9月17日(火)

のんさん秘密の写真展、実はIoTアパートの体験会
山田 剛良(日経テクノロジーオンライン副編集長)

2017/7/27 6:30
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不動産投資会社インベスターズクラウドの子会社Robot Home(東京・港、古木大咲社長)が6月、ちょっとユニークなプロモーションを行った。同社は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術を使ってアパート管理システムなどを手掛ける。プロモーションは、ネット企業らしいシカケが話題を呼んだ。

Robot Homeは新築アパートの室内を使って写真展を催した

Robot Homeは新築アパートの室内を使って写真展を催した

そのプロモーションとは、NHKの朝ドラ「あまちゃん」や最近ではアニメ映画「この世界の片隅で」の声優としても知られる女優のん(本名・能年玲奈)の写真展を、東京・中野の新築アパートで1週間だけ開催するというものだ。

JR中央線の東中野駅から歩いて10分強。汗をかきかきたどり着いた閑静な住宅街の2階建ての新築アパートが今回の写真展の会場だ。ワンルームが6室。それぞれが展示室になっており、扉を開くと写真家の藤代冥砂氏が撮り下ろしたみずみずしいのんの大きな写真が来場者に迫ってくる。

「正直、プレスリリースがネットで話題になれば十分と思ってた。1100人もの人に実際に足を運んでもらえたのは望外」。そう語るのは、今回のプロモーションを立案したインベスターズクラウドFIRSTORDER事業部長の岡田考功執行役員だ。岡田氏はもともとアートディレクターで、同事業部は社内外のプロモーション案件を一手に引き受けている。

写真展は開催10日前にプレスリリースでひっそり告知されたのみ。会場となるアパートの場所は秘密にされ、交流サイト(SNS)での拡散やクチコミで気付いた来場者が専用サイトにアクセスし、来場時間を予約するとメールで場所が知らされる仕組みにした。

このメールには予約時間と会場への地図のほかに6つのリンクが組み込まれている。スマートフォン(スマホ)でメールを開いてリンクをクリックすると、別のサイトに飛び、アパート各室に付けられたリモートロックが解除される。しかもロックの解除は予約した時間帯しか機能しないようになっている。

実はこれ、Robot Homeが実証実験中の不動産事業者向けサービス「mireru」を利用している。賃貸住宅の空き室にリモートロックを取り付け、手元のスマホで解錠できるようにするサービスである。内見希望者や代行業者がネットで時間を予約するだけで鍵の受け渡しなく物件を見てもらえる。

「IoTを使ったアパート管理と言ってもなかなか理解されない。実際に体験してもらえる機会を作りたかった」。Robot Homeの吉村直也取締役は話す。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

会場のアパートもRobot Homeが提供する「賃貸住宅キット」が導入された第1号物件。専用のタブレットが設置され、部屋の防犯や家電、エアコンなどが制御できたり大家と連絡が取れたりするというもので、こちらも写真展に訪れると体験できるシカケだった。

実際には来場者全員が「スマホによるカギ開け」を体験できたわけではない。来場者が予想よりはるかに多く、カギが開けっぱなしになってしまうタイミングが多かったためだ。それでも「100人程度の来場者に実際に体験してもらえた。来場者の中には『Robot Homeってなにやってる会社?』と興味を持ってくれた人もけっこういた」(吉村氏)と手応えを語る。

岡田氏によるとこのプロモーションの企画自体、「約1カ月の突貫工事で作った」もの。予算にも限りがあり、藤代氏やのんには岡田氏の個人的な人脈で話を付けたという。もくろみ通りでなかった部分もあるものの「新社名の最初のプロモーションとしては大成功」と胸を張る。

言葉はかなり普及してきたが「IoT」はもともと分かりにくい概念だ。体験を呼び込むという意味で、今回のプロモーションは良くできている。この業界の企業には広く参考になるのではないだろうか。

[日経MJ2017年7月24日付]

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