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危うい銀行の個人ローン拡大

個人に無担保でお金を貸す銀行のカードローン事業が急拡大している。銀行は契約に際して利用者の返済能力や借入総額の確認を徹底し、多重債務者問題の再発回避に努めるべきだ。

日銀による一連の金融緩和策で、銀行はこれまで主力だった法人融資や住宅ローンでは利ざやを稼げなくなっている。貸し出し全体の金利水準が1%以下まで低下するなか、小口ながらも2桁の金利で貸せる個人向けカードローンは銀行にとって魅力的に映る。

大手から地方銀行まで一斉に重点分野と位置づけ、2016年度末の同ローンの残高は5兆6千億円と改正貸金業法が完全施行された10年末の1.7倍に膨らんだ。

必要な短期資金を調達できる個人ローンの機能や利便性を否定する必要はない。問題があるのは「年収証明書不要」「審査迅速」などと借り入れ意欲を過度に刺激する銀行の宣伝姿勢である。

06年に国会の全会一致で成立した改正貸金業法は、消費者金融業界に対する事実上の制裁だった。派手なテレビコマーシャルを大々的に流して手軽で安易な借り入れをあおった結果、返済のために別の借金を繰り返す多重債務者問題を引き起こした。改正法では貸金業からの借り入れを年収の3分の1までに制限する総量規制を導入。消費者金融会社の貸し出しは激減し、経営破綻も相次いだ。

この過程で銀行を総量規制の対象から外したのは、銀行を優遇するのが目的ではなく、消費者金融と比べて顧客の立場に立った審査体制が整っているという信頼感に基づいていたはずだ。銀行が空白となった個人ローン市場に「銀行は総量規制の対象外」などと、ことさらにアピールして攻勢をかけるのは品位も欠き、問題だ。

雇用の改善にもかかわらず、昨年の個人の自己破産申請件数は13年ぶりに増勢に転じた。銀行は金融庁の指摘を受けてローンの宣伝手法を見直すにとどまらず、啓蒙活動にも力を注ぎ、顧客に配慮した事業展開を徹底すべきだ。

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